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ムーティ、ヴェルディを語る

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 ナブッコを鑑賞した東京文化会館で販売されていた書籍「リッカルド・ムーティ、イタリアの心ヴェルディを語る」(音楽之友社)。思わず衝動買いしてしまったのだが、これは面白かった。
 タイトルそのままのとおり、ヴェルディについてマエストロ・ムーティが語っているのだが、彼のヴェルディに対する強い思い入れ(『人生を共にする音楽家』と言っている)と同時に、作曲家の意図に忠実であることがいかに重要なのかが力説されていて、大変興味深い。
 
 マエストロ・ムーティのファンならば必読の書だと思うが、そうでなくても、多くの音楽愛好家の皆さんに是非お薦めしたいと思う。ヴェルディの作品について、指揮者の観点から(ここがポイント)解説されているし、指揮者がどのように作品にアプローチしていくかという点についても詳らかにされているからだ。イタリアオペラファンなら誰でも関心のあることであろう。
 
 それにしても感心するのは、ムーティヴェルディ作品に向き合うにあたって、単にスコアを読むだけでなく、作曲家時代の背景を研究したり、当時の手紙を読んだりして、常に作曲家の意向を探ろうとしていることだ。
 
 我々は「そんなこと、指揮者なら当たり前の仕事じゃないの?」と思ってしまうかもしれないが、果たしてそうだろうか。
 現代の多くの指揮者が、スコアから何が読み取れるかということに対し躍起になっている。スコア研究は熱心だが、ムーティのように作曲家の意図を探るための研究にどれだけの時間を費やしているのかといえば、疑問符を付けざるをない。
 それくらいムーティヴェルディに対する向き合い方は尋常ではない。もちろん同郷作曲家に対する共感というのもあるだろうが、何よりも愛と使命感を強く感じるのである。
 
 今回のローマ歌劇場来日公演で、彼がタクトを振るナブッコシモン・ボッカネグラを聴き、もし「素晴らしかった」という感想を持たれたのであれば、それはすなわち「ヴェルディの核心に触れた」ということだと思う。
そのように導いてくれたのがムーティだった。
そしてそれはムーティでなければ導けなかった。
 
そう断言してもいいかもしれない。