タイトルそのままのとおり、ヴェルディについてマエストロ・ムーティが語っているのだが、彼のヴェルディに対する強い思い入れ(『人生を共にする音楽家』と言っている)と同時に、作曲家の意図に忠実であることがいかに重要なのかが力説されていて、大変興味深い。
マエストロ・ムーティのファンならば必読の書だと思うが、そうでなくても、多くの音楽愛好家の皆さんに是非お薦めしたいと思う。ヴェルディの作品について、指揮者の観点から(ここがポイント)解説されているし、指揮者がどのように作品にアプローチしていくかという点についても詳らかにされているからだ。イタリアオペラファンなら誰でも関心のあることであろう。
我々は「そんなこと、指揮者なら当たり前の仕事じゃないの?」と思ってしまうかもしれないが、果たしてそうだろうか。
現代の多くの指揮者が、スコアから何が読み取れるかということに対し躍起になっている。スコア研究は熱心だが、ムーティのように作曲家の意図を探るための研究にどれだけの時間を費やしているのかといえば、疑問符を付けざるをない。
今回のローマ歌劇場来日公演で、彼がタクトを振るナブッコやシモン・ボッカネグラを聴き、もし「素晴らしかった」という感想を持たれたのであれば、それはすなわち「ヴェルディの核心に触れた」ということだと思う。
そのように導いてくれたのがムーティだった。
そしてそれはムーティでなければ導けなかった。
そう断言してもいいかもしれない。