クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/5/3 メンヘングラートバッハ

 市内には有名な現代美術館があり、地球の歩き方にもいちおう紹介されているが、そうした美術に興味がある人以外の観光客がこの街を訪れる目的はただ一つ。
 ドイツのどこにでもある何の変哲もない一都市であるにも関わらず、その名が世界中に知れ渡っているその理由。ブンデスリーガの名門フットボールクラブ、ボルシア・メンヘングラートバッハの存在である。
 
 今からおよそ40年前。人気スポーツといえば野球と相撲くらいの当時。一部の物好きを除き、サッカーが娯楽コンテンツの範疇外だったニッポン人に、世界の情勢を伝えてくれる希少なテレビ番組があった。ご存じの方もいらっしゃろう、テレビ東京で放送されていた「三菱ダイヤモンドサッカー」である。
 この番組を通じて世界に夢を馳せていたサッカー小僧は決して少なくない。まだ小学生だったサンジ少年も、何を隠そうその一人だった。「野球なんてのはアメリカと日本でだけ人気で、世界のメジャースポーツは絶対的にサッカーなんだよ」ということを、私はこの番組で知ったのである。
 
 ちょうどこの頃の1970年代。ブンデスリーガで圧倒的な強さを誇っていたのがボルシア・メンヘングラートバッハだった。必然的にダイヤモンドサッカーで実況中継される回数も多くなる。私と同年代あるいはもう少し上の輩にこのチームのファンが多いのは、こうした事情に拠る。
(ちなみにダイヤモンドサッカーでは「ボルシアMG」と紹介していて、私なんかはてっきりボルシアが地名だと思っていた。)
 伝説のアラン・シモンセンギュンター・ネッツァー、更にはベルティ・フォクツユップ・ハインケスといったやがて監督としても名声を博していく往年のスーパースターたちは、みなこのチームの出身である。
 
 輝かしいほどの歴史を誇るクラブだが、そんな栄光の軌跡など見る影もないほどに低迷した時期がある。私が前回この地を訪れたのは18年前だが、この頃既に凋落傾向が始まっていた。やがて下位をさまよい、二部にも何度か落っこちた。
 息を吹き返し、ようやく上位を狙えるくらいまで持ち直してきたのは、ほんの最近のことだ。新スタジアムができ、客席の大幅増に伴ってクラブの経営状況が改善し、強化が少しずつ進んできた証と言えよう。
 
 だが、私は以前のスタジアムの雰囲気が好きだった。前回に訪れた時は感動した。小さくていかにも古風な造りだけど、歴史と伝統を感じさせるものだった。観客席とフィールドが近く、選手の息遣いが聞こえるくらいだった。しかも、中央駅から徒歩で行くことができるほど近かった。
 
 今回久しぶりにボルシアの試合を観ようと思って調べてみて、新スタジアムがまったく別の場所に建設されたことを初めて知った。かなり遠くなってしまい、徒歩では無理でシャトルバスを利用するとのことであった。
 実際行ってみると、確かに近代的でカッコイイが、どこにでもあるような普通のスタジアムだった。ちょっと寂しいが、地元の人に言わせれば、それで強くなるのなら何の文句もないのだろう。外部の人間が口を挟むことではない。
 
 メンヘングラートバッハデュッセルドルフの近郊都市だ。電車で20分くらい(Sバーンだと30分くらい)とかなり近い。早めにメンヘングラートバッハに到着し、スタジアムに向かう前に街の中心部をぶらついてみた。スタジアムだけでなく街そのものもかなり近代化されていて、以前の面影がなく、全然記憶が蘇らなかったのだが、まったく変わっていなかったことが一つ。
 それは街の中心広場のカフェや立ち飲みバーみたいなところで、ビールをたらふく煽りながらたむろしているたくさんのサポーター連中だ。試合前からすっかり出来上がっちゃって、気勢(奇声?)を上げる連中ども。だが咎める人は誰もいない。試合日の日常であり、風物詩なのだろう。彼らの文化なのだ。
 こうした光景を傍から見ていると、自分が単なるよそ者であることを痛感する。これもまたちょっとさびしいことであった。
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関係ないけど、街で見かけた100円ショップならぬ1ユーロショップ(笑)。どこにでもあるんだなあ。
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