クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/2/13 ニューヨーク・フィルハーモニック

2014年2月13日   ニューヨーク・フィルハーモニック   サントリーホール
指揮  アラン・ギルバート
リサ・バティアシュビリ(ヴァイオリン)
ショスタコーヴィチ  ヴァイオリン協奏曲
ガーシュイン  パリのアメリカ人
 
 
 面白いプログラム構成だと思う。古典であるベートーヴェンを軸にしながら、そこから発展させる形で近現代を志向させ、最後はアメリカらしく締める、といった意図が感じられる。寄せ集めのようにも見えるが、それならそれで人種の坩堝ニューヨークらしいではないか。
 
 日系の指揮者ギルバートは、見た目的には決してスマートな指揮ぶりとは言えず、大味のような印象を受けるのだが、よく聴いてみると、意外にも基本に忠実でオーソドックス。このギルバートがニューヨーク・フィルハーモニックの音を着実に変化させている。
 昔のニューヨーク・フィルは、やたらと上手くてやたらと音がでかく、いかにもアメリカらしい機能美を誇っていたのだが、ギルバートはそこに緻密さを持ち込んだ。
 開演前や休憩中に楽団員がステージ上でウォームアップや練習をしている時の音を聞いていると、特に金管連中なんかは脳天気でうるさいくらいパンパカ鳴らしていて、「やっぱりニューヨーク・フィルだなー」と思うのだが、いざ本番となるとしっかりとアンサンブルに徹した演奏を披露して、驚かされる。これはもう間違いなくギルバートの徹底した指導の賜物なのだろうと思う。
 ただし、一部の奏者、特にホルンなんかは、もっともっと音を出したくてウズウズしているのが伝わってきて、これがなかなか笑えるわけだが。
 
 さて、この日の最大の聴き物はバティアシュヴィリのコンチェルト。固唾を飲んで聞かずにはいられないほどの緊迫感があって凄味のある壮絶的な演奏。技術は完璧だが、その高度な技術を感じさせないほどの音楽的完成度である。今、ショスタコーヴィチVn協を演奏させたら、彼女が世界ナンバーワンだろう。
 それもそのはず、録音CDは日本レコードアカデミー協奏曲部門で大賞を取って名盤と認定されているし、5年前のN響との共演でもこの曲を演奏して圧倒的名演を繰り広げた。この時に受けたインパクトは今も鮮烈に残っていて、この日はまさにその衝撃が再び蘇った感じであった。
 
 個人的には、世界的にまだそれほどの知名度がなかった13年前、東京交響楽団定期演奏会で演奏したプロコフィエフの協奏曲第1番を聴き、その時「この奏者は必ずや将来大物になる」と確信した。そのとおり世界のトップ奏者の階段を順調に歩んでいるのを目の当たりにし、とても嬉しい気持ちだ。
 
 最後のパリのアメリカ人。
 もうかれこれ30年以上コンサート通いを続けているが、この曲を生で聴くのは、なんと、初めてである。
 たぶん私はガーシュインに対し、偏見と見下しの感を持っているのだと思う。耳に馴染みやすいミュージカル風メロディーの数々をつなぎ合わせただけの単純な曲じゃないか、と。
 
 実際にそういう曲であることは間違いない。だが、この日の演奏を聴いて、「それで何が悪いのだ?」と認識を改めるに至った。ゴージャスで、楽しくて、心地良い音楽。鑑賞を心から楽しみ、大いに満足した。