クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2022/3/19 都響

2022年3月19日   東京都交響楽団   サントリーホール
指揮  アラン・ギルバート
清水和音(ピアノ)
バルトーク  中国の不思議な役人
リスト  ピアノ協奏曲第1番
コダーイ  組曲ハーリ・ヤーノシュ


インバルが来日出来なかったのは残念だった。15日に演奏される予定だったショスタコ13番バビ・ヤールは、昨年に続き中止。聴きたかった・・。

同じくインバル指揮の予定でありながら、中止にならなかった本公演。主席客演のA・ギルバートが代わりを務め、開催決行した。
プログラムを変えなかったのは、賢明である。こうした時、「指揮者は変更、これによってプログラムも変更、でも払い戻しはしませんから~」みたいな措置をしゃあしゃあと講ずる団体があるが、まことに無礼、不届き千万である。指揮者が変わってプログラムも変わったら、それはもはやまったくの別公演なのだ。

さて、それでは最初から「ギルバート指揮の本プログラム」だったとしたら、私は果たしてこのチケットを買っただろうか。
当初の購入動機は間違いなくインバルだからであった。
さてギルバートだったら・・・うん、たぶん、きっと買ってただろう。バルトーク、リスト、コダーイというハンガリーを代表する作曲家の作品を並べたプログラムは、エキゾチックで十分に魅力的だ。

ポイントは、ハーリ・ヤーノシュ。
基本的に私は民謡がベースになっている作品はあまり好きではないが、このハーリ・ヤーノシュはまさしくそんな風情が漂う作品である。
一方で、演奏によって如何様にもなる作品でもある。
つまり、「面白ぇ!」なのか、「つまんねー」なのか、そこらへんは指揮者とオーケストラの腕次第というわけだ。

で、この演奏の結論を言おう。
面白かった!

よかったね。成功じゃん。

急な代役変更を務めたギルバートが、どこまで作品解釈を落とし込み、演奏をリードしたのかはよく分からない。ゴリゴリと振っていたが、その実、主体性はオーケストラの側にあったような気がする。
だが、楽しく気持ちよく開放的に演奏させ、金管楽器をパンパン鳴らして発散させ、それによってこの作品の魅力を大きく開花させたことは間違いなく、その意味でギルバートのタクトは的を射ていたと思う。
その金管楽器のパンパンの鳴らせ方とかが、なんだか妙にアメリカのオケっぽい。さすがは元ニューヨーク・フィルの指揮者だと感心したが、果たして関係あったのか、それとも単なる気のせいか。

あとは、本公演をもって都響を卒業することが決まっていた主席トロンボーン奏者小田桐さんへの餞として、オケ奏者みんなが一丸となっていたことも、きっと大きかったのだろうと思う。

終演後のセレモニーも、なかなか感動的であった。
オーケストラの皆全員が小田桐さんを労い、指揮者と、更には客席の聴衆までを巻き込んで、「お疲れ様!」の拍手を届けている。ご本人様も感無量の様子。

いいなあ・・・。ああいう送られ方をされたら、きっと本人は嬉しいだろうなあ。

我が職場でも定年退職者がいた場合、3月末の最後に花束などをお渡しする小セレモニーを見かけることがあるが、大抵の場合において、いかにも儀礼的、お付き合い的な扱いだ。セレモニーが終わると送った側の連中はサッと自席に戻り、翌日になったらきっとその人のことをすっかり忘れる。
組織のセクショナリズムが横行する会社と違い、オケは奏者全員が気持ちを一つにして合奏する、というのがきっと大きいんだろうな。