指揮 ネヴィル・マリナー
かくいうオレも忘れていたけどさ(笑)。
どうもマリナーは誰もが認める巨匠として崇められるといった扱いではない気がする。
それはおそらく、大オーケストラではなく、室内管弦楽団のシェフとしてあまりにも有名になってしまったことと、レパートリーが広範であるが故にかえって的が絞れず、特に交響曲に真価を発揮するような孤高のスペシャリスト感に乏しいことが原因だと思う。
だが、クラシックのCDを集めている人なら、必ずその中にマリナーの録音を何枚か見つけることが出来るはずだ。我々は多かれ少なかれマリナー先生にお世話になっているのである。もっと評価されてしかるべきであろう。
そんなマリナーの公演に足を運んだのは久しぶりだったが、印象は以前とまったく変わりがなかった。矍鑠として元気に立ったままタクトを振って、とても89歳とは思えない。しかもオーケストラへのコントロールが非常に能動的で、グイグイと引っ張っている。
オーケストラも最大限の力で指揮者に応えていた。「マリナーさんのために全力でやってやろう」という意気込みと敬意が感じられ、聴いていてとても清々しかった。
ただ、音楽的には個人的に少々物足りないと感じた部分もあったことを正直に記す。
ドヴォルザークの交響曲は民謡的要素が色濃いが、ひとえに民謡と言っても喜怒哀楽の感情や春夏秋冬の季節感があって、それが各楽章の性格に表れているのが特徴。そのコントラストの描き分けがイマイチと感じた。もちろんテンポや強弱の変化はあるが、表現的にメリハリがあまりなく、単調に聞こえてしまったのだ。
そうじゃなくても、私はドヴォルザークが苦手なんだからさー。
ひょっとして名指揮者マリナーなら苦手なドヴォを面白く聴かせてくれて、「おいおい、結構いい曲じゃんかよ!」というふうに変わるかと期待したのだが、残念ながらそううまくはいかなかった。
苦手認識は簡単には改まらないわな。
いつかそのうち、私にもドヴォルザークが好きになるが日がやってくるかな?
苦手意識を変革させ、その魅力を存分に伝えてくれる指揮者はいったい誰だろう?
いや、マリナー先生でさえダメだったのだから、一生苦手なままかもね(笑)