クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2013/8/21 なりゆき泥棒

イメージ 1
 
 
2013年8月21日   ロッシーニ・オペラ・フェスティバル   テアトロ・ロッシーニ
ロッシーニ  なりゆき泥棒
指揮  リン・イーチェン
演出  ジャン・ピエール・ポネル(オリジナル)
    ソニヤ・フリゼル(再)
管弦楽  オーケストラ・シンフォニカ・G・ロッシーニ
ジョルジョ・ミッセーリ(ドン・エウゼビオ)、エレナ・ツァラゴワ(ベレニーチェ)、エネア・スカーラ(アルベルト伯爵)、ロベルト・デ・カンディア(パルメニオーネ)、ヴィクトリア・ヤロヴァーヤ(エルネスティーナ)、パオロ・ボルドーニャ(マルティーノ)
 
 
 「ポネルの再演」と聞いた時は、少々がっかりの気持ちがあった。オペラ史に名を残すほどの演出家ポネルとはいえ、もはや過去の人である。現代の演出が強いメッセージを発信し、どんどんと先鋭化する中、あくまでも物語に忠実な古臭い演出に、きっと退屈してしまうだろうと思ったのだ。
 
 とんでもなかった。目から鱗が落ちた。26年前のプロダクションとは思えない。今もなお新鮮で、魅力に溢れた名舞台だった。これは大きな驚きだった。
 
 感心したことはたくさんある。
 装置や小道具をわざと観客に見えるように運んだり、持ち上げたり、たたんだり、要するに「人の手によって動かす」ことによって、舞台空間に創造性が加味されていく。いかにも「手で書きました」みたいな簡素な装置は、分かりやすさと親しみやすさの増大につながっていく。伝統的な衣装は、登場人物の役割と性格を瞬時に理解するのに貢献する。
 
 コミカルな演技や動作が、音楽にぴったりと合っているのもいい。ポネルが音楽を踏まえた振付をしていることが一目瞭然だ。
 
 一見、基本ストーリーの忠実な再現でありながら、その中に演出家の新解釈によるちょっとした味付けも見つけることも出来た。
 ドタバタ物語の発端であるカバンの取り違えは、オリジナル脚本では単なるハプニング、間違いだが、ポネルはこれを「マルティーノの策略」として意図的なものにしていた。本来は単なる脇役でしかないマルティーノが、ポネル演出では「カギを握る人物」「裏で操る人物」に仕立てられていたのだ。なーるほど。
 
 私はポネルの実力に改めて感心した。
 同時に、現代演出に辟易している多くのオペラファンは、きっとこういう舞台を観たいのだろうなと思った。せっかくだから、世界の歌劇場に貸し出したらいかがだろうか。どこでもヒットすること間違いなしだ。
 
 
 この素晴らしい舞台を活かすも殺すも、出演歌手がどれだけ生きた演技が出来るか次第だが、幸いにも見事な演技を披露して、上演を成功に導いた歌手がきちんと存在した。一人は上記のとおり「カギを握る人物」となったボルドーニャ、もう一人はブッファの第一人者であるデ・カンディア。
 
 特にデ・カンディアのすっとぼけた演技は超がつくほど天才的である。まさに名歌手でありながら、名俳優だ。
 
 音楽的には、登場人物6人の出来具合に多少の差が出たが、「誰が良くて、誰が良くない」とあげつらうのはやめることにする。
 
 指揮者は、名前のとおり中国系で、台湾出身の女性。年齢不詳だが、若く見える。実際は30代かもしれないが、20代に見える。その若さでフェスティバルのメインオペラを振るとは大したもの。抜擢されたのだろう。小柄で華奢だが、タクトは鋭敏。暗譜。ロッシーニの快活さはよく出ていたと思う。
 
 オーケストラは・・・もういいや、ノーコメント(笑)。