クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

波乱に満ちたベネルクス旅行

 アントワープブリュッセル、そしてアムステルダムと、実質的に観光したのはわずか三日間という短い旅を終え、本日午前中に帰国した。
 
 一度アントワープ当地でご報告させていただいたとおり、今回の旅行は出発前からか・な・り危うかった。そして出発だけでなく、実は最後の帰国の瞬間まで危うかったのである。
 
こうして予定どおり帰国できたのはラッキー、単なる運のおかげなのだろうか。
 
 もちろん運もそうだが、私がこれまで経験してきた海外旅行の様々な出来事から体得した危機察知能力と回避能力が今回は少し発揮されたような気がする。その辺の経緯については、これからの旅行記で追々書いていくこととしたい。
 
まず、今回私が鑑賞したオペラと劇場を先に紹介しよう。
2月7日  フランダース・オペラ(アントワープ)  ヴェルディナブッコ
     D・ユロフスキ指揮、D・スレーター演出
2月8日  ベルギー王立歌劇場(モネ劇場・ブリュッセル)  プッチーニマノン・レスコー
     C・リッツィ指揮、M・トレリンスキー演出
2月9日  ネザーランド・オペラ(アムステルダム)  ロッシーニ「ギョーム・テル(ウィリアム・テル)」
     P・カリニャーニ指揮、P・アウディ演出
 
 
 モネ劇場でのマノン・レスコーは、私が贔屓にしているE・M・ウェストブルックがタイトル・ロールを務めるというので、目を引いた。また、アムスでは、私のクラシック鑑賞人生で昨年ついに起こったロッシーニルネッサンスによって、大いに観たい衝動に駆られた。
 
 そして、アントワープ
 指揮者の名前を見た瞬間に飛びついた。グラインドボーン音楽祭音楽監督ロンドン・フィル首席指揮者。英国を中心に活躍し、若手ながら既にその名が世界に轟いている俊英ユロフスキ。にも関わらず、私はまだ彼がタクトを振る音楽を一度も聞いたことがない。
ユロフスキを聞けるチャンス!!これはいいぞ!!
しかし、それにしても、なんでアントワープ??
まあいい。どこの劇場に出演しようが知ったこっちゃない。
 
こうして三日間の行程はあっという間に定まった。三都市は近接しているので移動も楽。観光も十分できるだろう。我ながらナイスな計画と自画自賛だった。
 
その後、公演のチケット入手情報を得るために、フランダース・オペラのHPを閲覧。そこに紹介されていた指揮者ディミートリ・ユロフスキの写真と略歴。
ん?? こんな顔していたっけ?ユロフスキ。こんなデブだったっけ?ユロフスキ。もっと精悍だった気がするけどな。
ん?? 何?? フランダース・オペラ首席指揮者? は?? ウソだろ?
そう言えばディミートリだったっけ? いや違う。英国で活躍しているのは確かウラディーミルだったような・・・。
 
調べました。
こいつら兄弟だって・・・。
ありゃまあ・・・(笑)。私としたことが・・・。くそー。
でもいいさ。仕方ない。問題ない。行き先は変更しないぞ。アントワープは久しぶりだしね。
 
今回の旅行計画はこうして決まったわけです(笑)。ケッ、所詮こんなもんですよ、オレの旅行計画なんて。
 
 
さて、次に今度は出発前の最大の懸念事項だったボーイング787問題について。
 
 最初に「おや??」と気づいたのは、Kくんとの台湾旅行の帰りの飛行機内(全日空ANA)だった。機内誌をパラパラとめくると、ボーイング787の就航開始記事があり、最新機導入を大々的にPRしていた。そこには、アメリカやソウル方面などと共に、「フランクフルト便」も同機で運行すると書いてあった。
 
 787機の相次ぐ故障事故を受け、同機については原因究明が図られるまでの間、運行停止となることが既にニュース報道されていた。なので、私はすぐに「これはひょっとしてヤバいのでは?」と直感した。私の予約はルフトハンザ・ドイツ航空だったが、共同運行便で、実際の使用機はANAの787だったのである。
 
 台湾から帰国後、私はすぐにルフトハンザ・ドイツ航空日本支社に確認の電話をした。
「お客様の仰るとおり、全日空が運行するフランクフルト便は787型なので、現在大幅にスケジュールが変更になっています。かなりの便が欠航になることが決まっています。」
 
 うわっ・・ヤバい!!
 
「ですが、お客様の日の便については、全日空社が代替の777型機を用意して運行する予定だと聞いています。万が一変更となる場合は当社からも連絡を入れます。お客様も是非最新情報を入手してください。」
 
 旅行の三日前。
「お客様の出発便については現時点で全日空より欠航の連絡が来ていませんので、運行の予定です。ただし、帰国便についてはまだ確定していません。こちらについても、全日空からは777機で代替する予定との連絡を受けていますが、まだ決定ではありません。」
 
 更に。ちょうどこのタイミングに合わさるかのように、追い打ちを掛けるかのように、恐ろしく嫌なニュースが流れてきた。
 
 出発の2月6日、大雪の天気予報である。
 
 予報によると、1月14日に首都圏の交通機関を完全にマヒさせた大雪警報がまた発令されるらしいのである。
 
 飛行機は雪に弱い。弱い雪でも遅延が起きやすい。大雪だとキャンセルが発生する。ヘタすると、空港そのものが閉鎖になる。
 
 私の飛行機は羽田発、夜便と言われる午前1時10分出発のANA機だった。当日の朝。既に荷造りを終え、出発の準備は万端なのに、羽田空港のHPのフライト情報では、依然として「運行確定」マークが出ていない。夜の出発のため昼の仕事には支障がなく、通常どおり出勤したが、全然仕事が手に付かない。
 
 ただし、雪に関して言うと、御存知のとおり、大げさな予報に反して雪は積もらず、途中から雨に変り、夕方には止んでいた。
 ルフトハンザから運行の最終決定及びチェックイン開始のメール連絡が来たのは、ちょうどその頃だった。
 
 安堵して羽田空港に到着し、無事にチェックインを済ませたところで、ギョッとする情報案内を目にし、全身が凍った。それは全日空からの陳謝の掲示板だった。
 
「このたび、2月6日及び8日のフランクフルト便が欠航となり、皆様に御迷惑を掛けたことを深くお詫び申し上げます。」
 
私の飛行機はたまたま運良く運行したが、実は、前日も翌日も欠航だったのだ・・・。間一髪!なんてことだ!
 
更に。
運行状況を知らせる電光掲示板の、Arrival(到着)案内を見ると・・・。
翌日朝に到着するフランクフルト発羽田行きの便がキャンセルになっていた・・・。
 
要するに(当たり前だが)、787問題は、何の解決も図られていないのである。
 
私は全日空カウンターに駆け寄った。そして、かなり強く迫った。
「すみません。私の帰りの便は運行決定ですか?もし現時点で絶対に飛ぶという決定がなされていないのなら、変更してください。成田帰りで結構ですので、ルフトハンザ機にしてください。」(※ちなみにルフトハンザ機は、ボーイングではなくエアバス社である。)
 
全日空応対職員は次のように回答した。
「リクエストを承ります。ただし、ルフトハンザ航空社と調整を図った上で明日以降にルフト社から最終回答します。お客様は旅行中、メールを受信できる状態にありますか。それならば、回答をメール連絡しますので、それで確認してください。」
 
こうして私は、ドタバタしながらもようやく機中の人となり、ヨーロッパに向かったのであった。帰りの便が決定されないまま・・・。
 
ああ恐ろしい。
 
続く。