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2012/9/1 読響

2012年9月1日  東京芸術劇場リニューアルオープン記念演奏会
指揮  下野竜也
合唱  東京音楽大学合唱団
小川里美(ソプラノ)、清水華澄(メゾ・ソプラノ)
マーラー  交響曲第2番復活
 
 
 9月になった。まだまだ暑いが、夏休みも終わってこれから徐々に本格的なクラシック音楽シーズンに突入していく。この秋も楽しみな公演が目白押しだ。
 まずは、長らく改修中だった東京芸術劇場のリニューアルオープン記念公演からスタート。
 
 思い起こせば、この劇場がオープンしたのは、バブル景気崩壊の足音が聞こえ始めた頃の1991年・・・。
 
 建設計画の段階では、イケイケの絶頂期だったんだろうけどねえ・・・。
 
 施主だった東京都からすると、東京文化会館に代わり「新たな芸術文化の発信拠点」となるような一大施設を造ろうと息巻いたのだろうが、残念ながら思惑どおりにはいかなかったと言える。今回のリニューアルで、文字どおり「復活」の足がかりをつかむことが出来るか、というところだろう。
 
 劇場を訪れてみると、なるほど確かに変わった!見た目で一番変わったのは、空間を突き抜けていたあの直通エスカレーターが壁に沿い二段に分かれ、乗り継ぐような形で設置されたこと。確かに以前のエスカレーターは「もし昇降中に事故が起きたら、結構危ないかもな。」と思っていた。改善ポイントだろう。
 その他にも至る所に改修の跡が見え、全体として明るく、良い雰囲気になった。いいんじゃないでしょうか。
 
 もちろん、一番肝心なのは音響面。クラシックをメインとするコンサートホールであるからには、当然仔細に渡って検証し、明確なコンセプトの基に改修設計されたことだろう。
 だが大変残念なことに、この日、我々の席は二階席の一番右端の奥、三階バルコニーの真下という、おそらくすべての席の中でも最も劣悪な場所だった。音楽的にはこれ以上ないほどに壮大だというのに、音が全然届いて来ない。「改修前と後とで音がどう変わったか」という以前の問題。「やれやれ、トホホ」と嘆くしかない。
 今まで、この席付近に一度も当たったことがなかったので、油断していた。次回以降は注意して座席指定しようと思う。
 
 席は悪かったけど、それでも読響の演奏と下野さんの音楽についてはある程度語ることが出来る。
 
 下野さんは、若手指揮者の中では目覚しい活躍をしている一人で、その評価も高い。人柄も良さそうだし、オーケストラ奏者からの信任も厚そうだ。
 
 タクトは極めて基本に忠実。四拍子なら1、2、3、4と振るし、三拍子なら1、2、3と振る。メソッドのとおり。
 そんな真面目な音楽家であるから、楽譜に対しても極めて忠実。作曲家の指示にはしっかり従う。「第一楽章が終わったら、少なくとも5分程度の休みを取ること」とのマーラーの注釈が入っているのであれば、それを実行する。(その事実を知らない人は、あの長い間(ま)は『なんだ??』と思ったことだろう。)
 
 もちろん、その姿勢が悪いとは言わない。
 だが、今回に関して言えば、少々物足りないと感じた。
 極論を承知で言うと、楽譜を飛び越えて欲しいと思う。音符の再現ではなく、いかに解釈し、そこからどう発展させるか、だと思う。マーラーに従うのではなく、マーラーと対決して欲しかった。
 
 読響の演奏は、水準的にいつもの読響の実力相応程度だったと思う。リニューアルオープンだからと言っても、彼らにとってはさして特別なことではなかったようだ。燃焼度はマックスではなかった。
 
 その原因が、読響の主催公演ではなかったからなのか、上記の下野さんのタクトのせいだったのか、あるいは私が単に音の届かない席で聞いていたせいなのかは、よく分らない・・・。