2012年4月24日 ランカトーレ&アルベロ デュオ・リサイタル 東京オペラシティホール
グノー ロメオとジュリエットより 他
噂のテノールがついにヴェールを脱いだ!
おっとっと。これはあくまでも私個人にとってのこと。
セルソ・アルベロ。ようやく初めて聞くことができたのだが、アルベロ自身は今回が日本初見参というわけではない。昨年秋のボローニャ歌劇場来日公演で、海水飲んで喉を痛めたといってキャンセルしたバカ者テノールのピンチヒッターとして来日しているし、それ以前にもリサイタルで来たことがあったらしい。そして、ボローニャの清教徒では、私が鑑賞した日はシラグーサだった。
そのアルベロは、新星と呼ぶのは憚るほどもう既に世界を股にかけて活躍中で、その名声は日頃からオペラ情勢をチェックしている私の耳にしっかり届いていた。だから上記の清教徒の時は「シラグーサよりもアルベロを聞きたかった。残念。」と思ったし、今回のリサイタルは「ようやく!待ち人来たり!」と思った。
想像していたとおり、そして噂どおりの素晴らしいテノールだ。
まず、声そのものが美しい。発声が安定しているので、余裕でストレートに声が客席に届くのが素晴らしい。高音が出るのはテノール最大の武器だが、彼のアクートは輝かしく、シビレる。更には、歌だけでなく、ステージの上で茶目っ気を発揮して会場を沸かせるなど、スターの資質は十分である。
圧巻は、おそらく彼女のオハコと言っていいルチアの狂乱のアリアで、見事なコロラトゥーラテクニックに会場は熱狂的に盛り上がった。彼女自身も会心の出来だったのだろう。カーテンコールでは手を振りまくり投げキッスしまくり、舞台袖に引っ込んで思わず高笑いの「ウハハハ!」が客席に漏れ聞こえてしまって、それでまた会場が笑いに包まれるという楽しい一コマもあった。
いや、それにしても、ラテン系歌手のリサイタルは楽しい。デュオ・リサイタルだと丁々発止のやりとりがあって更に楽しい。
彼らは正にプロのエンタテイナーである。声で真っ向から勝負し、それで拍手喝采を受けると、調子に乗ってますますヒートアップしていく。ステージマナーやちょっとした仕草演技もあっぱれなほどに巧みで、どうすればお客さんが喜ぶかのツボを知り尽くしている。このため、堅苦しいクラシックコンサートではなく、極上のショーと化すのである。
この日のお客さんは、終演後、「良かったね。楽しかったね。」と笑顔で語り合いながら帰宅したことであろう。
ではフィレンツェで会いましょう、セルソ君。期待してまっせ!