2011年8月16日 ザルツブルク音楽祭 リサイタルシリーズ5 祝祭大劇場
ラン・ラン(ピアノ)、ワディム・レーピン(ヴァイオリン)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)
ショパン 練習曲集より
ここザルツブルクに、ヴァイオリン、ピアノ、チェロそれぞれの世界トップ級奏者が集結した。これだけの一流レベルになると、誰が引っ張るでもなく阿吽の呼吸だけで音楽が成立しそうなものである。だがこの日、明らかにラン・ランが音楽をリードし、二人をけしかけていた。一番若いのに、なんという大胆さか。
近年における中国の発展ぶりはめざましく、経済だけでなくスポーツや文化においても世界のトップで活躍する人がどんどん増えているが、クラシック界においてその象徴たる人物がこのラン・ラン。私も最初は「パンダみたいだなあ。もう少しマシな名前にならんのか。」などといった失礼な冗談を言っていたが、もはや冷やかすことなど到底できなくなった。‘現代の若きカリスマ’として全世界で絶大な人気を誇っている。
何と言っても彼の特徴、演奏スタイルは、爆発的なエスプレッシーヴォだ。彼の猛然たるクレッシェンドはまるで地響きのようであり、たたみかけるようなアッチェレランドはあたかもジェットコースターのようである。なるほど、聴衆がノックアウトされてしまうわけだ。
こうしてラン・ランが畳みかけ、他の二人が更に一段とエキセントリックになり、炎がどんどん燃えさかる。いやー、シューマンの最終楽章の凄かったこと!ボルテージが聴衆にもビンビンと伝播し、演奏終了と同時に盛大なブラヴォーがかかった。
スーパースターの一日限りの共演。真夏の夜の夢。