クラシック、オペラの粋を極める!

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イザベル・ファウスト

イザベル・ファウストが現代最高のヴァイオリニストの一人として、日本でもしっかり認知され、支持され、人気を得ているというのは、少々意外なことである。
というのも、彼女は人気ソリストに求められる華やかさ、輝かしい音色と高度な技術を見せつけるようなヴィルトゥオーゾタイプとは無縁のスタイルを貫いているからだ。

いるでしょ、全身を大きく動かして情熱的な演奏をする人。
イザベルはそういう派手なアクションにまったく関心がない。ホールいっぱいに鳴り響かせるような大きな音も目指していない。

アクション、弾き方には彼女なりのこだわりが垣間見えるが、それは、ひたすら適切な奏法であるか、という一点に絞られている。
演奏の志向が作品の内面に向かっているため、自ずと装飾的な部分が削ぎ落ちる。なんだか、その佇まいから、禅の修行者、侘び寂びの美意識みたいなものが感じられる。
いわば、通好みの演奏家

そういうタイプの演奏者が、日本でしっかりと支持され、人気を得ている、というのが、少々意外というわけである。

まさか、侘び寂びの美意識が日本人に相通じるものがあって、特別な親近感を呼ぶ演奏家、ということもないであろうが・・・。
素直に、日本の聴衆と評論家の耳が肥えている、と認めることにしましょうか。


彼女のそうしたスタイルは、古楽バロックの奏法研究の影響と見ることもできるかもしれない。

一方で、レパートリーの重要な柱の一つに、この日もプログラムに乗せたウェーベルンや、ベルク、シェーンベルクといった新ウィーン楽派が含まれるなど、先鋭的な切り口も併せ持っている。

単なる「世界最高のヴァイオリニストの一人」と位置づけるだけでは収まらない、独特の世界観を持つ孤高のヴァイオリニスト。それがイザベル・ファウストだ。

 

 

2021年1月23日   イザベル・ファウスト&アレクサンドル・メルニコフ デュオリサイタル   川口リリア音楽ホール
シューマン   ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番
ウェーベルン   ヴァイオリンとピアノのための4つの小品
ブラームス   クラリネットソナタ 変ホ長調(ヴァイオリン版)