指揮 ダニエル・ハーディング
モイツァ・エルトマン(ソプラノ)
ハーディングのストロングポイント。
オーケストラに対して「こうしたい。こういう音が欲しい。このように演奏して欲しい。」という指示を何の躊躇のなく明快に出すことが出来ること。曲を完璧に把握しているので、その要求は確信に満ちており、オーケストラから戸惑いや躊躇が生まれないこと。よって注文どおりの音を引き出すことが出来、成果物はハーディングの音楽そのものになること。そうした統率能力は疑いもない。実に大したものである。
ハーディングのウィークポイント。
この日のマーラーであるが、ハーディングの音楽をある程度知っていて、たまたまこのコンサートに行かなかった人に「どうでしたか?」と聞かれたとしよう。これに対して「上記のストロングポイントとウィークポイントのそのまんまだった」と答えた時、きっと「ああ、なるほどね、やっぱりね」と納得してくれるのではないだろうか・・・。そんなマーラーだった。
誤解のないように言っておくが、私はハーディングの音楽は好きである。基本的に。姑息で変則的に聞こえる部分も含めて(笑)。だが、今はまだ若いからいいが、この路線のまま突き進んでいいのかどうなのか・・・。いつか、壁にぶち当たる気がする。その時、彼はハードルを軽々と乗り越えて師匠のラトルのように天下を取ることになるのか??彼の活躍を引き続き見守っていくとしよう。
若いと言えば、モイツァ・エルトマンもライジング・スターだ。国際的なキャリアを徐々に積み上げつつある。なので、今回初めて聞く彼女に期待したのだが、良い意味で非常にデリケートだと感じつつ、やはりまだまだこれからだと思った。やはり彼女も引き続き見守っていくとしましょうかね。