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2013/11/9 新日本フィル

マーラー  交響曲第7番夜の歌
 
 
 目からうろことはこのこと。モヤモヤしていた視界が一気に晴れた。「7番というのはこういう曲だったのか」と気がついた。これは画期的な出来事だ。
 
 「マーラー交響曲の中でこの曲が一番好き」という人はあまりいないだろう。暗くてミステリアスだし、他の交響曲に比べて耽美さに欠ける。難解、ていうか、はっきり言ってよく分からない曲だ。
 
 だからこそ、ここはハーディングの出番というわけ。曲が複雑であればあるほど、彼の明晰さが発揮される。ハーディングならきっと理路整然とした答えを導き出してくれるに違いない。
 
 ご存知のとおり、まったく同じ日(二日間)に同じ曲でインバル指揮の都響とバッティングした。両方行って聴き比べた人もいるだろうが、どちらかにしか行けなかった人は、どちらに行こうかさぞ迷ったことだろう。私もその一人。
 私は新日本フィルを選んだ。他の交響曲だったらインバルかもしれないが、7番なのでハーディングにした。上記の理由からだ。
 
 その期待と読みは当たった。
 複雑な構造を見事に解き明かした、冴えた演奏だった。
 アプローチの鍵は、主観的ではなく、客観的であったこととみた。ツボを押さえ、ポイントを深く覗き込んではそれをえぐり出す作業をしばしば試みるハーディングだが、今回はスコアを俯瞰的に見ることに主眼を置いていた。そうやって音を大局的に整理し、響きを整理し、バランスを整理していった結果、それまで断片的にしか聞こえてこなかった音楽に一本の筋が見えた。それはまさしく光明と言えるものだった。
 
 いわゆるマーラーにありがちな世紀末的な感傷というものは取り除かれていた。もともとハーディングはそういう情感を全面に出さない指揮者だが、特にこの曲は必要ないと判断しているのだろう。私もそれで良かったと思う。
 
 毎度‘外し’や‘へくり’が多くてヒヤヒヤする金管群だが、この日は大きな破綻はなくてホッとした。(っていうか、公演のたびに「今日は大丈夫かな?」なんてヒヤヒヤさせるなんてプロとしてどうかと思うぜ!)
 新日本フィルはハーディングとの共演を心から望んでいるし、楽しんでいる。それは見ていてよく分かった。