クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/8/18 無料公開リハーサル

 連日繰り広げられる音楽祭プログラムの中に「ルツェルンフェスティバル・40ミニッツ」なる無料公開イベントを見つけることが出来る。この日、プロジェクトの一環として、ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラの無料公開リハーサルが開催された。本番を二日後に控えた練習風景を見学出来るまたとないチャンス。これは良い企画。見るしかない。
 
 本公演に向けたリハーサル自体は、おそらく一定の時間が確保されているのだと思う。そのうち一般公開されるのは一部で、これが40ミニッツ、つまり40分間。本番のコンサートホールとは別の会場(といってもカルチャー・コングレス・センター内)で行われた。
 開始時間は午後6時20分。40分だとするとちょうど午後7時に終わり、引き続き午後7時30分からコンサートホールで上演されるウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラにそのまま横滑りが可能。ちょうどいい。
 
さて、と・・・。
いったい何時に会場に向かったらいいのだろう。
ふらっと出向いて簡単に入場出来るものなのだろうか。それとも無料だけに人気があって、ノコノコ行ったら「満席お断り」なんてことにならないだろうか。そこらへんがまったく読めない。
 
 とりあえず30分前の会場到着を目指してホテルを出発。そうしたら、やはりというか、会場入り口周辺で観覧希望者が殺到していた。こりゃまずい。慌てて雑踏の中に割り込む。ちゃんと係員が列を作って並ばせればいいのに、そうしないので、ごった返し状態なのだ。しょうもねえなあ。
 
そんな人混みの中に、カードを配っている係員を発見。
「お!?これはひょっとして整理券か?」
当たり。整理券が出回っていた。気が付いてよかった。整理券を配っているのにもかかわらず入口付近に人が殺到しているのは、要するに少しでも良い席を確保しようということなのだろう。
 
 会場は満員盛況。立錐の余地もない。たった40分のリハとはいえ、プロオケの演奏をタダで聴けるというのは、フェスティバル鑑賞者だけでなく、立ち寄り観光客にとってもありがたいイベントであるに違いない。
 なお、当然のことながら、リハーサルなのでオーケストラ奏者たちは全員が私服である。
 
 定刻となり、司会者がマイクで説明を始めた。ドイツ語なので何を言っているか分からない。分からないが、そこで一つの重大な変更事項が告げられていた。
 どうやら指揮者のハーディングが急用だか何だかで会場入りしておらず、場を凌ぐために急遽代わりの指揮者を用意した模様。ピンチヒッターは、バーバラ・ハンニガン。
 
 バーバラ・ハンニガン。
 カナダ出身のソプラノ歌手だ。まだ一度も聴いたことがないが、その名前と評判は私の耳にもしっかり入ってきている。現代曲を得意としており、新作への出演も多数。今年5月にプレミエとなったバイエルン州立歌劇場のツィンマーマン「軍人たち(兵士たち)」では主役マリーを演じ、大絶賛された。
 彼女はどうやら指揮者としても活動しているらしい。このルツェルン音楽祭でも、マーラー・チェンバー・オーケストラの公演(ハーディングとは別の公演)でタクトを振っている。プログラムにはリゲティなどの作品が並べられていた。
 
 うーむ・・・。
 決して関心が湧かないというわけではない。だが、それならばむしろ歌の方を聴きたかった。オケのリハーサルを見せてくれるのなら、やはりハーディングを見たかったというのが偽らざる本音だ。
 
 リハは淡々と進められた。演奏し、時折り止めてちゃちゃっと指示を出し、またさらりと演奏する。これの繰り返し。本当は「ちゃちゃっと」「さらりと」ではないかもしれないのだが、外国語の壁が厚く、ハンニガンの指示が詳細に聞き取れないため(英語だったのだが)、そのようにしか感じられないのである。タクトと指示によってオケの音がみるみるうちに変化する、みたいな雰囲気ゼロ。ナッシング。
 
 うーん、なんだか面白くない(笑)。やっているのは知らない曲だし、退屈してきた。
 しかも無料公開なものだから、小さな子供連れのお客も多く、その子供が時々声を上げたり、泣き出したりするので、リハ風景を静かに見学するという状況にならないのだ。ちょっとひどいな。
 
「あーあ、こんなんだったら聴かなくてもよかったかな・・・」
そう思い始めた頃。時間にして半分くらい経過した時だろうか。ラフな格好の青年が打楽器の奥の方から姿を現した。演奏の邪魔にならないように、こっそり後部の椅子に腰掛けている。ハーディング様、遅れてようやくのご到着である。
 
 ハンニガンもすぐに気が付き、切りの良い所で演奏を止め、観客に「Ladies and Gentlemen, Mr.Daniel Harding!」と仰々しくご紹介。盛り上がるかと思いきや、パラパラとまばらな拍手。さては会場の多くの連中、この世界的な俊英指揮者のことを知らんな。若造だと思っているのか。不届き者め。
 
 バトンタッチとなり、ハーディングがようやくここで指揮台へ。もう時間にして残り10分もない。リハとして音楽作りをするには時間が足りない。
 ドヴォルザークの小品が軽く一曲演奏され、ここでタイムアップとなった。くそー、物足りん(笑)。
 
 ハーディングとマーラー・チェンバーのリハはその後も続けられるようだったが、小休止となって観客はここで退出。
 帰り際、私はステージに近寄り、ハーディング氏を隠し撮りのようにパチリさせていただいた。遅刻したんだから、それくらい許せよな。ただしブログ掲載は肖像権とかあるかもしれないし、勘弁したるわい(笑)。