クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

震災の影響2

 日本全国、更には世界中に連帯の輪が広がり、被災地に向けて温かいメッセージが寄せられている。
先週、欧州サッカーUEFAチャンピオンズリーグ決勝ラウンド一回戦の全ての試合会場で、開始前に黙祷が捧げられていた。「私たちは日本の皆さまと共にいます」という日本語表記のボードがフィールドに掲げられ、世界のトッププレーヤーが肩を組んで祈りを捧げる姿は本当に感動した。テレビの前でだらしなく寝っ転がって見ていた私は、その瞬間「うわっ、こりゃまずい」と思わず起立してしまいました。遠く離れたところで多くの方々が日本に思いを寄せているのに、日本にいる人間がゴロッと横になっていたのではあまりに申し訳ない。
 
今朝のNHKニュースでは、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団が本拠地楽友協会ホールで、本プログラムの前に追悼演奏をし、その後に観客と一緒に黙祷を捧げたと映像付で報じられていた。指揮者はバレンボイムだった。インタビューで、クレメンス・ヘルスベルク団長が「世界で我々の演奏を一番愛してくれているのが日本だから」と話していた。
なるほど、それは確かにそうかもしれない。日本ほどウィーン・フィルが最も多く訪れている国はないのではないだろうか?
この私だって、これまで世界で最も多く訪問している都市はウィーンなのである。横浜よりも名古屋よりも大阪よりもウィーンの街の方が詳しいしね。あ、そんなことは関係ないか、すまん。
 
 
ウィーン・フィルだけでなく、これまで何度も来日したことがあって日本に親しみを感じてくれている多くの世界一流の演奏家たちも、きっと思いを寄せていただいていることだろう。心より感謝申し上げようと思う。
 
 ただし、だからと言って、今非常に困難なこの時期に、予定どおりに来日公演を行ってくれるかといえば、「それとこれとは話は別」というのが正直なところではないだろうか。なんたって、原発事故である。微量とはいえ、放射物質が漏れているのである。
 日本人はそこで生活している以上そこにいるしかないし、テレビ等で散々「冷静な対応を」「直ちに健康を害するような状況ではない」と呼びかけられているので、「ああ、そうかいな。ここは踏ん張り時だな。」と我慢するが、外国人はそうではないからね。
 聞けば、既に少なくない国が日本国内の居住者に退避勧告を出したり、日本への渡航延期勧告を出しているというではないか。情報が不十分な外国人にとっては、福島も東京も同じ日本ということで一括りだろうし。日本人だって、アメリカの同時多発テロの時には、その後しばらくはグアムやハワイも含めてアメリカ全土への旅行を一斉に取り止めてしまったのだから。
 
 改めて思うのは、日本におけるクラシックのコンサートやオペラ公演というのは、ほとんど外国人の客演によって支えられ、彼らの技術と知名度に依存しているという事実だ。指揮者にしても、ソリストにしても、歌手にしても。
 
ということで、3月のほとんどの公演が中止となってしまったが、おそらく4月以降もヤバいのではないかと推測する。東京・春音楽祭のローエングリンもヤバいし、新国立劇場ばらの騎士もヤバい。もっと言うと、「メト、本当に来るつもり?」
 
驚いたのは、東京フィルハーモニー交響楽団の次シーズンである。音楽監督のD・エッティンガーを除く全ての指揮者とソリストを日本人で固めているのだ。キャッチフレーズは「日本人の力」。まるでこの非常事態を予測していたかのようだ。
 
来年度の東フィルの公演シリーズがもし上々の出来であったら、日本の底力がまた一歩上向いたという証になるだろう。