クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/10/2 新国立 アラベッラ

2010年10月2日  新国立劇場
R・シュトラウス  アラベッラ
指揮  ウルフ・シルマー
演出  フィリップ・アルロー
妻屋秀和(ヴァルトナー伯爵)、竹本節子(アデライーデ)、ミヒャエラ・カウネ(アラベッラ)、アグネーテ・ムンクラスムッセン(ズデンカ)、トーマス・ヨハネス・マイヤー(マンドリカ)、オリバー・リンゲルハーン(マッテオ)   他
 
 
 新国立の新シーズン開幕プレミエは「見た目で勝負」。
 鮮やかな青を基調とした装置。物語の場所であるウィーンのホテルも、近代的なインテリジェントホテル。森英恵が手掛けたドレスもエレガントだし、さり気なく雪をしんしんと降らせる背景も、どれもみんな美しい。そして、主役を歌ったミヒャエラ・カウネも、スラリとして気品があり、「見た目は」申し分ない。 (かぎカッコつけるあたり、意味深な言い回しだね(笑))
 
 「新シーズンの開幕を美しく華やかに彩る」というのがそもそものコンセプトで、第一目的だというのなら、それは見事に達成された。これをそのままメトで上演したら、見た目第一主義の保守的ニューヨーカーはさぞ喜び、「成功」ということになることだろう。
 
 だが、演出的に新たな視点や解釈を持ち込めたかといえば、残念ながらノーだ。舞台を美しく仕立て上げ、個々の登場人物に色々と演技を付けてはいるものの、物語の展開自体は単に脚本をそのままなぞっているだけだ。
 なかなか上演されない演目。おそらく初めて見る人も多いだろう。「斬新な演出を提示するよりも、初めての人のために分かりやすく」ということなのかもしれない。しかし、なにを隠そうアラベッラは新国立劇場のレパートリーとして三度目の上演なのである。(二度目は再演だったため、プロダクションとしては今回が二つ目。)なので、個人的にはもう少し踏み込んだ演出を見たかった気がする。アルローならそれが出来ると思うのだが。
 
 やり方なら、ある。
誰かにスポットを当て、その人物を物語の中心に据えて展開させればいい。ズデンカにスポットを当て、彼女の心の揺れ動きに迫ってみる。あるいはマンドリカにスポットを当て、田舎の金持ちと都会人との人生観のギャップに着眼してみる・・・などなど。このオペラは、タイトルはいちおう「アラベッラ」だが、ひょっとすると本当は「ズデンカ」かもしれないし、「マンドリカ」かもしれない。そこを問題提起するのが演出家の役目ではないかと思う。
 
 ・・・とまあ、ブツブツと小姑のような小言を呈してなんだが、なにを隠そうあたしゃ今回の公演、とっっても楽しみましたです(笑)。
 
 そりゃそうですよ、だってR・シュトラウスですぜ、旦那。音楽だけで十分に満足できてしまうのです。
今回の演出は決して音楽の邪魔をしないので、見た目美しい舞台を堪能しながら、何も考えずに音楽に身を委ねればいい。
 
第3幕最後のクライマックスで、アラベッラがコップの水を持ちながら静かに階段を降りてくる時の音楽の素晴らしさといったら・・・。涙、涙、涙。
ここの場面、アラベッラを演じる歌手のお方は幸せだろうねえ。この世のものとは思えないほどの美しい音楽を従えて、全観客の視線を独占しながら、階段を静かにゆっくり降りていくわけですからねぇ。最高っすね。
 
というわけで、私は旅行から帰ってきたら、またもう一回行く予定。音楽も演技も更に熟成されていることを期待しつつ。