2010年8月12日 ザルツブルク音楽祭
指揮 ダニエレ・ガッティ
演出 ニコラウス・レーンホフ
ところで。
この日、ドン・ジョヴァンニが午後3時30分に開演し、終演が午後6時30分。次のエレクトラの開演が午後8時30分。二時間の間隔は、休憩時間として十分であり申し分ない。さらに、他日のエレクトラ公演の開演時間は午後8時からなのに、この日に限ってなぜか午後8時半。
これはどう考えても「オペラオタクの皆さん、両方見られまっせ!さあさ寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」と誘っているようなものではないか!?私のような人間はまんまと罠にはまって「はい、いっちょ上がり」。まさに‘飛んで火にいる夏の虫’というわけだ、とほほ・・・。
それにしても、演奏するウィーンフィルの皆さんは大変だ。指揮者や歌手は演目ごとだからいいが、オーケストラはオペラ公演の大半を担当し、更にはコンサートもある。もちろんいくつかのチームを編成し、やり繰りしながらやっているんだろうけど、本当にご苦労様である。それいでいてレベルが落ちないのだから、このオケの潜在能力たるや尋常ではない。
開演前の客席にて、先輩Kさんと待ち合わせ。聞けば、Kさんはこの日成田からフランクフルト経由でザルツブルク入りし、早々に着替えて会場入りしたとのこと。もし飛行機に遅延が発生すれば開演に間に合わないし、間に合わなかったらエレクトラは一幕物だから鑑賞自体がアウト。その上、ザルツブルク行きの飛行機にオーバーブッキングが発生したとのことで、そういうピンチを切り抜けて綱渡りでやってきた。それなのに、いつもと同じように平然と客席に座って開演を待っているKさん。もう師匠は凄すぎる。
すごいと言えば、指揮者ガッティもそう。なんたって、バイロイトの「パルジファル」を掛け持ちしているのである。連日のごとく、バイロイトとザルツブルクを往復しているわけだ。きっとチャーター機とかヘリとか使って飛んでいるんだろうな。
まさかバイロイトと同じ気分になっちゃっているんじゃないでしょうねー。バイロイトならピットが奥底に沈んでいるから、多少は大きく鳴らしても問題ない。でも、ガッティのような一流指揮者がそういう状況の違いを掌握できないとは到底思えないのだが・・。
レーンホフの演出を見て、「おっ!? これは梅図かずおの世界だ!」と思った。陰湿な空間、おどろおどろしたメイク、気味悪く這いずり回る黒い虫、そして凄惨なクライマックス(殺されて逆さ宙づりにされたクリテムネストラ)・・・怖っ!!
小学生の時に読んだ「漂流教室」やその他の恐怖シリーズは怖かったなあ。怖かったけど、結構夢中になって読んだなあ。当時を思い出しつつ、演出とガッティの大音響に背筋を凍らせた一夜でした。