すったもんだの一夜が明け、ひんやりと涼しいドイツの最初の朝を迎えた。気温は15度くらいか。猛暑の日本からすると快適だが、半そでだと寒いくらいである。
本日から早速バイロイトでニーベルングの指環鑑賞がスタートするのだが、まずはその前に午前中、ここニュルンベルクで市内観光。さっそく街に繰り出す。元気よく「マイスタージンガー」前奏曲を歌いながら。人に見られたら危ない奴らと思われたかもしれないが、幸い日曜日の朝ということで人通りは少ない。
中央広場、デューラーの像などを経て、頂点のカイザーブルグ城へ。ここから眺める旧市街はなかなか絶景だ。
ガイドツアーで城内を見学した後、いよいよお楽しみのニュルンベルガーソーセージを食す。もちろん絶品のヴァイスビアとともに。
ビールがうまい!ソーセージもうまい!ただし、昼食にはやや早い時間だったため、朝食をたっぷり食べた腹が減っておらず、満足感は中くらいだった。残念~。
12時48分の電車でいざバイロイトへ。
約1時間の車窓の風景はのどかな丘陵地帯が続き、美しい。ぼーっと景色を眺めているとあっという間に目的地に到着だ。
祝祭劇場はバイロイト中央駅ホームから望むことができる。はるか向こうの小高い丘にそびえ立つレンガ色の建物を見つけ、思わず歓声を上げる。「キッタ~!!ついに~!いやいやいや。」誇らしげ、満足げにうんうんと頷く二人。
まずはホテルに入って休息だ。まだまだ欧州との時差にも慣れていないし、夜の本公演で眠たくなったら目も当てられない。昼間の時間を潰してでも夜に備えなければならぬ。
ところが、仮眠しようとしてベッドで横になっても全然眠れないのだ。体内時計が調整を拒んでいるのか、それとも知らず知らず興奮しているのだろうか?
結局一睡も出来なかった。あ~あ。まずいなあ。大丈夫かなあ。
こうなったら気合で臨むしかない。9年も待たされたのだぞ。ようやく本物のワーグナーを体験できるのだぞ。眠くなっている場合ではないのである。
私は日本から持参したカフェイン入りガム、眠気除去ドリンク、おでこに張る冷却シートなどの必殺睡魔対策グッズをバッグに詰め込み、10年前のザルツブルク音楽祭以来という蝶ネクタイを首に締めて黒の正装で身を固めた。
ホテルのロビーには我々と同様に正装でバッチリ決めて出発の送迎バスを待つ紳士淑女がズラリ。ゴージャスな雰囲気を漂わせながらも、あまり体裁がよくなく、安っぽいクッション(お尻が痛くならないようにするため。ホテルが貸し出しているのが多い。)をそれぞれ手に持っていて、そのアンバランスさがなかなか笑える。かく言う私も日本から持ってきましたよ、クッション。100円ショップで入手しました。すべての演目をこなしたら、帰国の際にはそのままドイツのホテルのゴミ箱行きが決定~。
さて、と。準備万端。いざ!出陣!!