アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ランベルト・オルキス(ピアノ)
SMの倒錯世界にはこれっぽちの興味もないが、もし、‘この女王様’に「私の靴をお舐め!」と命令されたら、オレ、従っちゃうかもなあ(笑)。
そう、彼女はまさにヴァイオリン界の女王。私、大好きです。
それにしても貫禄あるよなあ、ムター。そして高貴だよなあ、ムター。そばに寄ったらバラの香りが漂うんだろうなあ、ムター。
初めて来日コンサートに行った時、その時彼女はまだ二十歳そこそこだったと思うが、ぷくぷく太っていて、じゃじゃ馬みたいだった。でも貫禄は当時からあったよなあ。なんたって「カラヤンに見出された天才少女」だったんだもんなあ。
以前に雑誌のインタビューで語っていたが、ムターは一つのプログラムを時間をかけてじっくり取り組み、練りに練って仕上がった物を、ほぼ一年かけてリサイタルで披露しているのだそうだ。つまり、一年間はほぼ同じプログラムに専念して世界を回っているわけですね。たしか、キーシンやツィメルマンも同じスタイルだったと思う。
演奏家によっては同じプログラムでもその日の体調、気分、場所等で演奏内容を変える人もいるが、おそらくムターの演奏はいつどこで聴いても出来映えがぶれることはないのだろう。事実、この日のブラームスも十分に研究され、熟成された完成品であった。
音色に工夫を凝らし、陰影を醸し出すために、スル・タルト奏法(コマから離れた位置で弓を寝かせて弾くことにより、薄くかすれた音色となる)、ノンヴィヴラート奏法などを積極的に採り入れていた。狙いは確信的意図的で、そこから得られる効果も悪くない。
だが個人的には、彼女のヴィヴラートがビンビン効いた力強いフォルテ・アタッカ奏法が好きだ。高音の輝かしい響きは強烈な印象をもたらす。これ一辺倒で一気呵成にブラームスを弾ききっても私は何の文句はないのだが・・・。 まあ、そうはいかないか。ブラームスは一筋縄ではいかないことは、彼女が一番熟知している。
リサイタルのお楽しみ、アンコール。
結局、我々は女王様に平伏すしかありませんでした。ははーっ。m(_ _)m