2019年6月12日 V・レーピン・ヴァイオリンリサイタル(都民劇場) 東京文化会館
ワディム・レーピン(ヴァイオリン)、アンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)
フランク ヴァイオリン・ソナタ
腰が据わった泰然たる演奏だったが、決してスケールの大きさを感じさせるわけでもなく、逆に妙な落ち着きぶりに、物足りなさを感じた。なんだかコントロールの良さと安定感だけで勝負している老獪なベテランピッチャーみたいだった。
そんな印象は、休憩を挟んだ後半のプログラムで一変する。
奏法を特別に変えたわけではないのに、音楽は引き締まり、端正な音はキレをスピードを増して客席に飛んでくるようになった。
意識的にギアを上げたのだろうか。それとも作品やプログラム構成の妙なのか。
アンコールに至り、更に熱量も増加させて、一気呵成に畳み込む。終わってみれば、会場は大盛り上がりだった。
お見事レーピン、すべては計算づくということか。だとしたら、いかにも芸達者らしい仕掛けに脱帽だ。
ピアノのコロベイニコフは、まったく知らず、ノーマークだったが、演奏を聴いて思わず「お?」と身を乗り出してしまった。単なる伴奏の域を越え、堂々とレーピンと渡り合った。
いっそのこと「レーピン&コロベイニコフ デュオリサイタル」と銘打っても良かったのではと思うが・・・それじゃ興行的にあかんのだろうなあ。いいピアニストであったとしても、やっぱ「格」が違うもんなあー。
これが現実ってやつ。