クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

DVD ばらの騎士

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R・シュトラウス  ばらの騎士
収録:2009年1月31日 バーデン・バーデン祝祭劇場
指揮  クリスティアンティーレマン
管弦楽  ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
ルネ・フレミング(元帥夫人)、ソフィー・コッシュ(オクタヴィアン)、ディアナ・ダムラウゾフィー)、フランツ・ハヴラータ(オックス)、フランツ・グルントヘーバー(ファニナル)、ヨナス・カウフマン(歌手)  他
 

 観に行きましたよ、この公演。はるばるバーデン・バーデンまで。
 当日に売っていたプログラムには、早くも収録DVD発売が予告されていた。このたび、国内版(日本語字幕対応)が発売されたので、さっそく購入して鑑賞しました。
 
 それにしても、改めて素晴らしいキャストが集ったものだと思う。
 フレミング、ダムラウ、コッシュという人気、実績、実力の三拍子揃った3人に加えて、グルントヘーバーやハヴラータが脇をがっちり固める。ちょい役でJ・カウフマンが登場して華を添える。
 統帥する指揮者はこの人しかいないだろう、ティーレマン。とにかく「豪華」の一言だ。
 
 フレミングに注目が行きがちだが、私はゾフィーを歌っているダムラウの素晴らしさに感嘆する。声そのものの美しさもさることながら、ゾフィーという役柄や性格について入念に研究されており、表情や仕草までが完璧にハマっている。
 オックスのハヴラータはこの役の第一人者。今や「ハヴラータと言えばオックス、オックスと言えばハヴラータ」。世界中で歌っている。メトの来日公演でもこの役はハヴラータだったし、来年の新国立も彼だ。
 
 ‘第一人者’と言えば、もちろんフレミングもそうだ。存在感と佇まいが魅力に溢れている。きっと女性としてマルシャリンに心から共感しているのだと思う。第一幕最後のモノローグでの憂いや、第三幕最後で身を引いて去っていく時の気高さ、ほんのちょっぴり未練さを加えた演技はさすがとしか言いようがない。
 
 そうした歌手達の細かな表情とニュアンスを絶妙に伝えているのが、映像監督のブライアン・ラージ。オペラなどの映像製作においては黒澤明、F・コッポラ級の大巨匠だ。
 ただし、この人はクローズアップを多用しすぎるため、出来映えが映画のようになってしまい、「舞台」としての臨場感が乏しくなるのが若干気になる。
 
 リバイバルとなった故ヴェルニケの演出は、決して古くさくなく、シンプルでシックで、美しさの中に気品が漂う。鏡のついたて装置が舞台に変化をもたらしているが、映像だとその効果がやや喪失されていて残念。鏡による奥行き感や反射の妙は生の舞台ではとても活きていたのだが。
 
 第三幕のラストシーンは実に印象的。
 ゾフィーとオクタヴィアンの夢見るような二重唱が終わると、二人は一緒に寝そべり、献呈された銀のバラをお互い手に取り合って掲げる。これをモハメット(パントマイムのピエロ)がさっと取り上げ、本物のバラの一輪に差し替える。
「銀のバラ」=「本物ではない模倣品」=「所詮はおもちゃ」と見立て、「それまで子供だったゾフィーとオクタヴィアンが、出会ってようやく本物の愛を知り、大人になった」というふうにみることができる。
 あるいは、逆に「出会ってお互いを好きになったはいいが、君たちはまだまだ子供。本物の愛を知るには至っていない。もっともっと成長しなさい。」という教訓を与えている、と解釈することも可能だ。どう捉えるかは、見ている人に自由に委ねられているようだ。
 
 このDVDは出演者のインタビューの特典映像付き。
 最近はこのようにインタビューやリハーサル風景を加えるボーナス映像が付くことが多く、なかなかいいと思う。出演者や制作者がどのように解釈し、表現しているのかを解説してくれるのはありがたいことだ。
 フレミングが流ちょうなドイツ語で語っているのをみて、さすがだな、と思った。アメリカ人は英語しか話さないと思っていたが。
 同じく母国語しか話さないと言われるフランス人、S・コッシュのインタビューは、やっぱりフランス語でした(笑)。