2009年11月18日 新日本フィル定期演奏会 サントリーホール
指揮 クリスティアン・アルミンク
マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」
マヌエラ・ウール(ソプラノ)、宮平真希子(ソプラノ)、安井陽子(ソプラノ)、アレクサンドラ・ペーターザマー(アルト)、清水華澄(アルト)、ジョン・ヴィラーズ(テノール)、ユルゲン・リン(バリトン)、ロベルト・ホルツァー(バス)
圧倒的な迫力サウンドに痺れたい方、目眩く押し寄せる音響の津波に掠われたい方、是非マーラーの8番を聴きましょう。しかも生で!
マーラー8番という作品そのものが「奇跡」であり、上演されること自体が特別な「事件」である。チャンスはそう多くない。上演されると決まったら、行かねばなるまい。「聴きに行く」ではない。「体験しに行く」だ。
サントリーホールのP席を埋め尽くす合唱団。更には少年少女合唱隊がRA席の上部通路に陣取る。壮観とはこのことなり。
ステージいっぱいに並ぶオーケストラがスタンバイし、コンマスが現れ、ソリストの歌手たちが、そして最後に指揮者が登場したら、もう後は、最初に書いたとおり圧倒的な迫力サウンドと目眩く押し寄せる音響の津波に身を任せればいい。それだけだ。
指揮者のアルミンク。
若さに物言わせて思い切りダイナミックにタクトを振って、オケから200%のパワーを引き出す-
-かと思いきや、意外とクールで、余裕をかましている。
サウンドに力強さは備わっている。だからといって‘力任せ’かというとそうではない。渾身のタクトで唸りながらエネルギーを充満させ、オケを爆発させるインバルとは対極のアプローチだ。
おそらくアルミンクのマーラー観はこうだ。
指揮者が必死になって煽る必要はない。マーラーの楽譜どおりに演奏すれば、自ずと佳境へと導かれる。(マーラーは楽譜に「ここはこう」「ここはこのように」といった指示を詳細に書き加えている)
だから、演奏者や聴衆と一緒になって熱くなっては、進むべき道が見つけられなくなるということだろう。
思い起こせばマラ9もそうだった。
そこらへんの効果については、聴く側にとって好き嫌いが分かれるかもしれない。
だが、これはアルミンクのマーラーなのだ。アルミンクが考えるマーラーでいいのだ。少なくともこの日の聴衆は熱狂的に受け入れた。アルミンクはたくさんのブラボーをもらい、いつまでも鳴りやまないカーテンコールに応えていた。
もっとも、聴衆は彼を讃えたというより、マーラーの曲そのものに圧倒された部分はあったと思うけどね(笑)。