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2022/7/9 新日本フィル

2022年7月9日  新日本フィルハーモニー交響楽団  すみだトリフォニーホール
指揮  クリスティアン・アルミンク
合唱  二期会合唱団、柏少年少女合唱団、流山少年少女合唱団
今井実希(ソプラノ)、清水徹太郎(テノール)、晴雅彦(バリトン
バルトーク  弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽
オルフ  カルミナ・ブラーナ


おかえり、アルミンク。
新日本フィル音楽監督を10年も務め、当時はそれなりに人気があったアルミンク。
ところが、東日本大震災後の一連の公演をキャンセルして、「見捨てやがったな、このヤロー」と評価ガタ落ちしたアルミンク(笑)。

まあ、あんときゃ確かに仕方なかったとは思うがな・・。

その後、広響など他の日本のオケに度々客演したが、新日本フィルを振るのは実に9年ぶりだそう。私自身も、その音楽監督卒業公演だったマーラー3番以来の久しぶり。懐かしいではないか、アルミンク。

ああそれなのに・・。
私はまったくアルミンクのお姿を見ることが出来なかった。

合唱が配置されることとなった本公演。感染対策でスペースを確保するためだったと思うが、ステージを拡張し、オーケストラの配置を客席側に寄せた結果、3階席後方だった自分の席からは指揮者がまったく一ミリも見えないという状態になってしまった。

このすみだトリフォニーホール、元々3階席は視界不良エリアなのだが、指揮者だけじゃなく、弦楽器群さえもまるごとほぼ見えないという異常な視界は、さすがにあり得ない。
これはひどい。ひどすぎる。

「安い席を買ったんだから仕方ないじゃん」と言われれば、それまで。
「音楽なんだから音が聴ければそれで十分じゃん」という意見もあろう。
だが、指揮者がどのようなタクトで音楽をコントロールし、熱量を創出していたか、という情報を視覚によって確認する作業は、生のコンサートでは重要だ。少なくとも私にとっては。

そうした機会を奪われてしまい、ただひたすら管楽器と打楽器と合唱を傍観するしかない事態に陥って、私の集中力は完全に削がれた。

ということで、演奏がどうだったかについて、もはや感想を語る気にもなれない。


残念だったことがもう一つ。
合唱の人数についてだ。

コロナ発生後、当初は合唱付きの公演自体がすべてキャンセルとなった。
今、ようやく合唱付きの公演は行われるようになったが、それでも配置人数は必要最小限に留められている。
今回のカルミナでも、おそらく通常の半分以下の体制だろう。

その結果、どうなるか。
大合唱ならではのスケール、威圧感、ド迫力は失われ、カタルシス効果は半減する。

もちろん二期会合唱団はプロだから、物足りなさをカバーするくらいに十分音楽的だ。

でも・・・。
本来なら、こんなもんじゃないのだ。

どうやらコロナは完全に死滅する様相はない。きっとこれからもずっと感染対策というのは続けていくのだろう。

だとしたら、もう二度と迫力の大合唱は聴けないのか。かつて感じていた陶酔を得ることはもう出来ないのか。

「ブラヴォー!」コールだってそうだ。
素晴らしい演奏が終わった直後に会場を包んだ怒涛の歓声は、過去の遺物となってしまうのか。

いや、違う。
欧米では、もう既に元に戻っていると聞く。
結局、日本人は誰も責任を取りたくないのだ。同調圧力に極度に弱く、自己責任にする勇気がない民族なのだ。そういう社会なのだ。


・・・そんなことをカルミナ・ブラーナを聴きながら考えていたら、まったく音楽を楽しむことが出来なかった。
指揮者も見えなかったし、本公演の鑑賞は大失敗だった。