クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2009/10/31 新国立 魔笛

2009年10月31日  新国立劇場
モーツァルト  魔笛
指揮 アルフレッド・エシュヴェ
演出 ミヒャエル・ハンペ
松位浩(ザラストロ)、ステファノ・フェラーリ(タミーノ)、カミッラ・ティリング(パミーナ)、安井陽子(夜の女王)、マルクス・ブッター(パパゲーノ)他


 まだ私が海外旅行初心者だった1990年11月のこと。ウィーンに行き、国立歌劇場の他にフォルクスオーパーにも出掛けた。
 当時、‘フォルクス’なんぞ単なるオペレッタ(=ミュージカルみたいなもの(?))劇場という勝手な思い込みをしていたが、実際に「エフゲニー・オネーギン」を観て、その本格的な上演とレベルの高さに、ひっくり返るくらい驚いたことを覚えている。
 その公演は、オネーギンがB・スコウフス、タチアーナがA・ピエチョンカ、オルガがL・ブラウン、演出家がH・クップファーなど錚々たる陣営で、驚愕したのもさもありなんだが、ピットから聞こえてきた音楽も魔法のようで、あたかも催眠術のかけられたかのような感覚に陥った。「フォルクス侮れず」との確固たる印象と共に、催眠術をかけた指揮者の名前も記憶の片隅にインプットしたが、これが「アルフレッド・エシュヴェ」である。
 というわけで、新国立のラインナップでこの人の名前を見つけた時から、密かに公演を楽しみにしていた。

 この日、私は舞台上そっちのけでピット内のエシュヴェを見つめていた。クライバーのバラの時でさえ、こんなに覗き込むことはしなかったというのに(笑)。あの時、私に催眠術をかけたのはいったい何だったのか?何か秘技があるのか?それともあれは単なる気のせいだったのか?

 残念ながら、結局よく分からなかった。そりゃ劇場も、演目も、オケも違えば、印象は異なるのは当然だ。
 だからといって、「あれは気のせいか、何かの間違い」と断じることもない。エシュヴェは「特別なこと」はしていないが、「普通のこと」=当たり前のことを当たり前にやっている。なめらかなタクトさばき、的確な歌手へのイントロサイン。魔笛、相当数を振っているんだろうなと感じられる余裕と貫禄。

 日本では無名で、私だってたまたま海外で聴いたから知っていただけで、そうでなければ注目しなかっただろうし、ひょっとしたら公演自体行かなかったかもしれない。

 でも、世界には、地味だし有名ではないけど、いないと困るたたき上げの劇場指揮者がたくさんいる。そういう人の着実な仕事を見逃すべきではないだろう。

 歌手陣では夜の女王を歌った安井さん、ザラストロを歌った松位さんが大変立派だった。カミッラ・ティリングは今年7月に続いての来日、ごくろうさま。