クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

1997/9/15 ウィーン国立 エフゲニー・オネーギン

1997年9月15日   ウィーン国立歌劇場
チャイコフスキー   エフゲニー・オネーギン
指揮  シモーネ・ヤング
演出  グリシャ・アサガロフ
ガリーナ・ゴルチャコーワ(タチヤーナ)、マルゴルツァータ・ワレウスカ(オルガ)、トーマス・ハンプソン(オネーギン)、フランシスコ・アライサ(レンスキー)、ペーター・ローゼ(グレーミン公爵)、ゲルトルーデ・ヤーン(ラリーナ)    他


シモーネ・ヤングは、女性指揮者のパイオニア的存在である。
と同時に、その中で最も成功しているお方だろう。ハンブルク州立歌劇場の音楽監督を担った実績は侮れない。初めて女性でウィーン・フィルを指揮した人でもある。もはや女王と言ってもいいかもしれない。
国立歌劇場との結びつきも深い。1993年にデビューして以来、ウィーンの膨大なレパートリー公演を今も支え続ける功労者だ。

この日の我々の席は、ミッテル・ロージェと呼ばれる真正面のボックス席1列目。VIPなど招待客が座ることも多い特等席ということで、開演前は「我々に相応しい(笑)」などと浮かれていたが、いざ演奏が始まると、私は指揮者の後ろ姿を注視しながら、じっくり聴いていた。ここは、ピットの中を覗き込むには絶好のポジションだった。
ヤングは2日連続でのタクトだったが、前日は一人の偉大な歌手に全神経を集中させていて、指揮者はまったく眼中になかった。
なので、この日は指揮者をよく観察しようと思ったというわけ。
当時、私はヤングのことをまったく知らなかったが、この若さで、そして女性で、ウィーン国立歌劇場のタクトを任せられるというのは、相当実力が買われているからに違いない。
そう睨んだわけである。

びっくりするくらい丁寧に振っている。
多くの指揮者が力を込める箇所と抜く箇所を上手に切り分けるが、この指揮者はすべての音を均等に扱っている。
「あ、このタクトなら演奏しやすいだろうな」

以上がこの時のヤングについての感想だ。

丁寧かつ細やか、そしてしなやかなタクトは、20年経った今も健在であり、彼女の特徴だ。
美しい流麗さとエレガンスを兼ね備えており、そこらへんは女性らしい強みでもある。

とはいえ、その後、まさか「女王」の道を歩んでいくとは思いも寄らなかった。そこまでの輝かしい未来を見抜くことは、この時出来なかった。


歌手について。
ガリーナ・ゴルチャコーワ。この時がウィーン・デビューだったとのこと。
ゲルギエフによって発掘され、マリインスキー歌劇場(当時はキーロフ歌劇場)の歌姫として、一時、プリマ的存在だった。まさにこの頃人気絶頂、旬の歌手で、その勢いでのウィーン初見参だ。

私にとっては、1993年キーロフ歌劇場来日公演でのプロコフィエフ「炎の天使」レナータ役があまりにも強烈だが、このウィーンのタチヤーナについては、今思い起こしてもイマイチ印象に残っておらず、残念。
そういえば最近お名前をあまり聞かないが、今もご健在なのかな?

名歌手ハンプソンも、この時初めて聴いた。
ものすごく期待していたのだが、実を言うと、こちらも強いインパクトを残すに至らず。あらら・・・。
原因はなんとなく推測できる。
きっとロシア語の問題だと思う。とにかく不明瞭だったから(笑)。
難しそうだもんな、ロシア語。許してあげましょう。(何様?)

ちなみにアライサのロシア語も、輪をかけたように不明瞭。
こうなってくると、もはや劇場側の人選の問題か?

ということで、この時の出演歌手の中で今でもはっきり思い出せるは、何を隠そう、グレーミン公爵を歌ったペーター・ローゼであった。
実は、グレーミン公爵、登場時間は短いにもかかわらず、いかにもチャイコらしい、美しくしみじみとしたアリアのおかげで、けっこう印象に残ることが多い。トゥーランドットのリューと同様「おいしい役」と言ってもいいかもしれないね。
バス歌手なら、この役のオファーがあったら、「よっしゃ!」と思わねば(笑)。


こうしてウィーンでのオペラ三昧の日々が終わった。あっという間。寂しい~。

それにしても、4日連続で異なるオペラの演目が並び、しかも連日連夜、一流歌手が入れ替わり立ち代わりで登場するウィーン国立歌劇場。レパートリーシステムの強みを最大限に活かしている。いやー、マジすごい。
これぞ世界最高の歌劇場の実力であり、貫禄の為せる業ってわけだ。

Nくん、ウィーンのバカンス、満喫しましたか??

ちなみに彼はこの旅行がきっかけで海外旅行の楽しさにハマってしまい、その後、ウィーン再訪、念願のスカラ座詣でなど何度となく旅立って、そこに足跡を残していくことになる。

現在は御家族をお持ちなのでしばらく足が遠のいているが、お子さんがもう少し大きくなったら、是非ウィーンやミラノに連れて行ってあげたらいかが?

Kくん、今度「ボクも行きたい!」ってパパにおねだりしてみましょう!(笑)