クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2016/10/16 マリインスキー歌劇場 エフゲニー・オネーギン

2016年10月16日  サンクトペテルブルク・マリインスキー歌劇場   東京文化会館
チャイコフスキー  エフゲニー・オネーギン
演出  アレクセイ・ステパニュク
エカテリーナ・ゴンチャロワ(タチヤーナ)、ユリア・マトーチュキナ(オルガ)、ロマン・ブルデンコ(オネーギン)、ディミートリ・コルチャック(レンスキー)、エドワルド・ツァンガ(グレーミン公爵)  他
 
 
10月になってようやく外来オペラを観ることが出来たが、やっぱり本場物はいい!ロシアの歌劇場によるロシアの出し物。素直に感動してしまった。これぞチャイコフスキーの響き。ゾクゾクした。
 
データベースで調べてみたら、オネーギンを前回観たのは2008年で東京オペラの森と、それから二期会。その前が2003年で今回と同じゲルギーとマリインスキーだった。つまり本場物のオネーギンを観るのは13年ぶりということだ。ゾクゾクするわけだな。
 
マリインスキー劇場管の音が良い。響きが厚くて濃くて、ちょっと冷たい。これがチャイコフスキー独特の哀愁を帯びた旋律によく合っている。
 
ゲルギエフはいったいこの作品を何度指揮しているのだろう。相当の回数であることは間違いない。音楽がすべて頭に入っていて、情景を捉えつつ登場人物の心情を動かす揺さぶり加減が絶妙。テンポは完全にゲルギーの術中。「そこまで遅くする??」という場面もあるが、決してあざとくはない。
時に歌手の下僕となり、時に歌手を強引にリードするオーケストラコントロールも自由自在。手捌きが慣れているが、だからと言ってルーティンには決して陥っていないのがミソ。ゲルギー得意のやっつけ仕事を心配していたが、そんなことはなかった。
 
歌手達も好演。タチヤーナのゴンチャロワさん、気に入りました。演出のおかげもあるが、仰々しくないのがいい。特別な美人ではないけど、役者の香りがした。
一番拍手をもらっていたのは、やはりというか、コルチャック。日本のファンは、今年3月新国立劇場のウェルテルの成功をみんな覚えている。
 
演出も素敵だった。
何度となくある間奏シーンでタチヤーナを窓辺に佇ませるのは、大人ではない少女の恋の悩みにスポットを当てているのだろうか、それとも大人になったタチヤーナの少女時代の回想として仕立てているのだろうか。
社交界のハイソな貴婦人に成り上がり、華やかに着飾って登場しながら、次のオネーギンの激しい告白を受ける場面では再び少女時代の質素な服装に着替え直して出て来るあたりは、「年月が経とうが、恋の感情は瞬時に過去にタイムスリップするのだ」ということを表しており、なるほど見事だなあと感心する。
 
もう一つ、有名なラブレターを書く場面で、実際に紙やペンを持たせず、歌と演技だけでタチヤーナの心中を綴らせたのがとても良いと思った。演出家は、観ている人にタチヤーナの思いを音楽によって想像させたのだ。音楽の力でシーンを作る。いい演出家だ。
 
終演後、会場を立ち去る際に、観終えた若い女性二人の感想話が聞こえてきた。
「オネーギンって、自分勝手だよねー・・」
「うんうん、そう。図々しいよね(笑)」
 
聞き耳を立てていたオジサンは大ウケしてしまいました