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2009/7/19 佐渡裕プロデュースオペラ カルメン

佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2009  東京文化会館
ビゼー カルメン
指揮 佐渡裕
演出 ジャン・ルイ・マルティノーティ
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱 二期会、ひょうごプロデュースオペラ合唱団 他
ステラ・グリゴリアン(カルメン)、ルカ・ロンバルド(ドン・ホセ)、ジャン・フランソワ・ラポワント(エスカミーリョ)、木下美穂子(ミカエラ)他


 東京ではなく、兵庫県立芸術文化センターから発信されたというところがミソの本公演。地方からこういう元気のいいプロダクションが誕生することは素晴らしい。びわ湖ホールオペラといい、そのびわ湖ホールとの共催を模索する神奈川県民ホールといい、これからも是非頑張って欲しい。

 演奏は、いかにもその関西らしく、あるいは佐渡らしく、ノリが良くてかつパンチが効いていた。

 カルメンのグリゴリアンは、姿はいかにもジプシーで艶っぽいが、歌唱は以外とまじめで清純だった。中途半端にそうなってしまったのではなく、おそらく本人もしくは指揮者からの要求によるものだったのだと推測する。

 演出について。
 全体としてまあまあだったが、いくつか「なるほど!」と思うところがあった。
 第1幕でカルメンに惑わされるドン・ホセをスニガ隊長がしっかりと影で見ているシーンは秀逸。ドン・ホセがカルメンを逃がしてしまうが、もしこれがカルメンの突き飛ばしによる不可抗力な偶発事故ならば、ドン・ホセがただちに牢獄行きというのはいささか酷というもの。今回の演出だと、ドン・ホセが明らかに意図してカルメンを逃すことを証拠として目撃しているわけで、牢獄行きが理にかなう。

その牢獄の中でカルメンの想いが妄想化し、ドン・ホセの頭の中でジプシーの歌が歌われるのもアイデアとしては面白い。ただ、個人的にはプロのダンサー達による熱狂的なフラメンコの方が好きだが。


ところで、佐渡さんの指揮をテレビなどの映像でなく、生で観るのは結構久しぶりだった。

 初めてこの人の指揮を見たとき、思わず眉をひそめた。どう見てもレナード・バーンスタインのパクりにしか見えなかった。また、単に一人で熱狂して汗を飛び散らしているだけの印象だった。はっきり言って色物だと思った。

 当時に比べるとずいぶんと肩の力が取れ、すっきりして洗練されてきたが、それでもまだそういう部分が若干残っている。アンチ佐渡が今も少なからずいて、今回の公演でも多数のブラボーに混じっていくつかのブーが飛んだのも、きっとそういう面ではないかと思う。

だけど、今はまだ彼のパッションが分からない人も、いずれはきちんと評価することだろう。まさに彼の師匠であるバーンスタインが、若い頃は好き放題やりたい放題だったが、年齢を重ねるごとに円熟していったのだから。現在の佐渡さんは、まさにその過程のさなかにある。