2025年7月18日 エルル・チロル音楽祭3 エルル祝祭劇場
1 バルトーク 青ひげ公の城
2 プーランク 人間の声
指揮 マルティン・ライナ
管弦楽 エルル・チロル音楽祭管弦楽団
演出 クラウス・グート
1
フローリアン・ベッシュ(青ひげ)、クリステル・レッチュ(ユディット)
2
バーバラ・ハンニガン(女)
フェスティバルとはいえ、開催している祝祭劇場は山間の田舎にある小さなホール。キャパシティはわずか800席程度。そこで、オペラを制作し、上演しちゃうご立派さ。しかも、以前には「ニーベルングの指環」4部作を上演したこともあるというのだから、こりゃもうハンパない。
補助金が潤沢なのか、強力スポンサーが付いているのか・・。
もっとも、今回の上演作品に関しては、出演者は少ないし、合唱も無い。なおかつフィレンツェ5月音楽祭との共同制作だし、上手に予算を節約したプロダクションと言えるだろう。
たまたまだが、今回の旅行で3回目となるダブルビル(2作品)上演。
コンサート形式で演奏されることも多い「青ひげ公の城」をオペラ上演で観るのは、14年ぶり3度目。なかなか上演される機会がない「人間の声」の鑑賞も、同じく3度目。
ダブルビルのオペラ上演の場合、異なる2つの作品をどのように繋げるのかというのは、演出上、一つのポイントであろう。
そこらへん、さすがはグート。目からウロコの斬新解釈で、見事なまでに関連付けた。
「人間の声」は、付き合っていた男が別の女性と結婚することになり、「女」が絶望して自殺、というストーリーだが、この付き合っていた男が「青ひげ公」、別の女性が「ユディット」という読替設定なのだ。つまり、「女」は青ひげ公に捨てられた女。
なーるーほーどー、そうきたか。
しかも、オリジナルは電話コードを自らの首に掛け回して自殺だが、読替えでは青ひげ公の城に駆け込んでいき、そこで青ひげを拳銃で射殺の上、自らにも撃ち込むという衝撃の結末!
また、「青ひげ公の城」では、ユディットが開けていく一つ一つの部屋に、かつて青ひげが愛した女性たちが、幽霊(あるいは魂が宿っている人形)みたいな形で常に存在。ユディットには見えていないが、でも女性たち(黙役)が傍らにいて、めちゃくちゃ不気味。まさしくホラー(笑)。
でも、それで物語がちゃんと成立している。

面白ぇー!!
さすがは先鋭演出家グート。
(※写真は、プログラム冊子の中に掲載されていた写真を更にスマホで撮ったもの)
指揮者のM・ライナは、ハンガリー出身で若干29歳の俊英。既に母国ハンガリー国立歌劇場の首席指揮者。注目の若手であることは間違いないだろうし、お国物である「青ひげ公の城」は手中に収めてある作品であろう。
「人間の声」の主人公「女」役をB・ハンニガンで聴けたことは、非常に嬉しい。
指揮者としての活躍も目覚ましい二刀流ソプラノ。まさに本公演と同じ2曲のカップリングで、パリ国立オペラでの上演ライブがブルーレイなどの映像作品として出ているが(E・P・サロネン指揮)、そこでも同役で出演、圧巻の歌唱を披露している。
声は決して大きくないが、針金のように鋭く尖っている。演技も迫真なので、観客は彼女の歌唱と演技を固唾を呑んで観、そして聴く。
「二刀流」と上で書いたが、もしかしたら歌手、指揮者、女優の三刀流なのかもしれない。有り余る才能が彼女に与えられている。

ハンニガン、日本のどこかのオケが指揮者として招聘してくれないものか。(別に歌手としてでもいいけど)絶対に駆け付けるんだけどな。