2019年4月14日 東京・春・音楽祭(合唱の芸術シリーズ) 東京文化会館
指揮 大野和士
合唱 東京オペラシンガーズ
クリスティアン・フォイクト(ヴァルデマール王)、エレナ・パンクラトヴァ(トーヴェ)、藤村実穂子(山鳩)、甲斐栄次郎(農夫)、アレクサンドル・クラヴェッツ(道化師クラウス)、フランツ・グルントヘーバー(語り)
2019年の珍現象、グレ祭り。その第二弾。
(本公演だけでなく、今年の東京・春・音楽祭は、例年以上に強力なソリストを加えたプログラムを並べていて、音楽祭の15週年に相応しい。感想記事を省略してしまったが、12日のアニバーサリー・ガラ・コンサートも、豪華歌手の競演で、めっちゃ楽しかった。)
さて、今回のグレ公演、そうした出演歌手の歌唱について、もちろん大いに語りたいところだが、その前にやはり巨大作品をまとめ上げた指揮者大野さんについて、触れないわけにはいかない。
歌劇場での着実なキャリアを誇り、オペラを得意とする大野さんだが、今回の演奏で傾注していたのは、物語でもなく、歌手への配慮でもなく、あくまでもスコアの中身だったような気がする。スコアの解析と進行管理。タクトの振り方を見れば、一目瞭然だった。
そうしたやり方、いかにも大野さんらしいのだが、興味深いのは、読響を振ったカンブルランも、同じようなアプローチだったこと。今まで気が付かなかったが、実はこの二人、築いてきたキャリアも含め、タイプが似ているのではないかとふと思った。
一方で、ディティールにこだわる分、全体的な壮観さは影を潜め、物語の進行は歌手に任せてしまったかのよう。この演奏をどの角度から受け止めるかによって、評価が分かれるかもしれない。
都響の演奏は素晴らしかった。高性能オーケストラであることを実証し、誇示してみせた。
歌手では、藤村さんが貫禄圧巻の歌唱。私が言うまでもなく、カーテンコールの拍手喝采が一際大きくて、みんながそう感じたようだ。
主役のヴァルデマール王を歌ったフォイクトは、不安定さが露呈していたが、だからといってあまりケチを付ける気にはならない。
なぜなら、これまでこの作品を生鑑賞して、安定して輝かしい歌唱を轟かせたテノールに一度も遭遇したことがないからだ。オーケストラの分厚い響きを背負って、なんだかんだ言って大変なんだと思う。
空気が薄くて打球が飛びやすい高地デンバーのスタジアムで投げるメジャーのピッチャーみたいなもんか??(笑)