2024年1月28日 樫本大進 エリック・ル・サージュ デュオ・リサイタル 所沢市民文化センター ミューズ アークホール
《シューマン&ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス vol.2》
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番 雨の歌
ブラームス、ディートリッヒ、シューマン(合作) F.A.E.ソナタ
クララ・シューマン 3つのロマンス
シューマン ヴァイオリン・ソナタ第2番
30歳で天下のベルリン・フィルのコンサートマスターに就任し、多くのクラシックファンをあっと言わせてから、早14年。
そうか、もうそんなに月日が経っているんだな・・・。
44歳という年齢は、音楽家として脂が乗り、今もっとも充実している頃ではなかろうか。
そういう時期・タイミングでの、ドイツ・ロマン派を代表するブラームスとシューマンに迫る全曲ソナタ・シリーズ。
やはりというか、さすがというか、悠然として、実りの秋のような成熟の演奏が披露された。
本人は間違いなくしっかりとした演奏家だろうから、リサイタル・ツアーを敢行するに当たっては、作品をとことん研究し、練習を積み、ピアニストと綿密な音楽合わせを重ねたことだろう。
だというのに、そうした一生懸命さ、鍛錬や苦心の跡というのが、あまり見受けられない。
静かにヴァイオリンを構え、集中し、音を奏でたその瞬間から、聞こえてくるのは純然たるブラームス、そしてシューマンの世界。浮かび上がるのは、演奏ではなく、作品。
これこそが、ドイツでのキャリアの中で培った素養と経験の成果、そして自信の為せる業なのだろう。余裕と貫禄、まさにそれだった。
プログラムの中では、3人の合作による珍しい作品、F.A.E.ソナタが興味深かった。
(※第1楽章がディートリッヒ、第2、第4楽章がシューマン、第3楽章がブラームス)
作曲家が異なり、微妙な作風の違いが醸し出されつつ、それでも全体としてはまとまっていて、一つのソナタとして出来上がり、違和感がない。面白かった。
ところで、この日、ピアノのル・サージュは、電子楽譜を使用。その画面上の譜めくりのために、アシスタントの方が横に付き、リモコンで操作していた。
余計なお世話なことだろうけど、リモコンで操作できるのなら、アシスタントさんはわざわざステージに出て横に付かなくても、ステージ裏でモニター見ながらでもやれるじゃん、と思ってしまった。
まあ、譜めくりというのは、きっと微妙かつ繊細なタイミングが求められる、ということなんだろうね。
そのうち、電子楽譜そのものが進化し、マニュアル操作しなくても、演奏音を自動感知してページをめくってくれる、というふうになっていきそうな気がする。
ていうか、もうそういう製品は既に存在しているのかな??