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2024/1/14 鈴木優人 チェンバロ・リサイタル

2024年1月14日   鈴木優人 チェンバロ・リサイタル   トッパンホール
『J.S.バッハを弾く 3』
バッハ   平均律クラヴィーア曲集第2巻

 

トッパンホールの主催により、2021年から始まった鈴木優人さんのバッハ・シリーズ、3回目。第1回が「平均律クラヴィーア曲集第1巻」、第2回が「パルティータ全曲」で、シリーズは一旦これで終了するとのこと。

私は第1回を聴き逃し、第2回の昨年のパルティータを聴いたのだが、バッハの作品を単品や抜粋ではなく全曲演奏することがいかにすごいことか、改めて思い知った。
聴き終えて、ものすごく疲れたのだ。こりゃ演奏する方は、さぞや大変だろうと想像した。

そして今回の平均律クラヴィーア第2巻。
いやー、これまた・・・。

公演の案内チラシには、「長大にして雄弁な、J.S.バッハの、そして鈴木優人の大冒険」と書かれてあった。
そう。まさに「長大にして雄弁」。
更に、「バッハの」「鈴木優人の」だけでなく、聴衆にとっても「大冒険」。
神秘の体験でありながら、壮大なチャレンジであり、そして大変な試練でもあり・・・。

バッハの世界、広大すぎる。
果てしない旅路、終わりがないかのような循環、宇宙の深遠さにぼーっとするかのような感覚・・・。
とにかく掴めない。参った。

正直に告白しよう。
いつもなら私はコンサートに行って、演奏者が何を語るのか、演奏から何が生まれるのか、そうしたものを追求するために、集中力を持って一生懸命耳を傾ける。
しかし、今回は途中でそれを放棄。やめてしまった。
傍観。イージーリスニング

言っておくが、鈴木さんの演奏自体が寄せ付けなかったわけではない。
演奏している姿、表情などを拝見すると、落ち着いて、ありのままにバッハと向き合い、率直に会話しているように見受ける。その様子は、等身大であり、身近。チェンバロという楽器の音色が優しいせいもある。
だが、なんていうか、語学堪能な人が流暢に外国人と会話していて、それを隣で一生懸命聞き取ろうとするが、結局分からない、みたいな感じ。
で、理解できず、もどかしいんだけど、でもなんか流暢な外国語は聞いていて耳に心地よい、みたいな感じ。


何を隠そう、バッハは、以前はあまり好きな作曲家ではなかった。
バロックそのものがあまり好きではなかった。
今はそうでもない。全然嫌いじゃない。だから、もう苦手意識は克服した、と思っていた。
今回、久々にかつての苦手意識を思い出してしまった。

すべての演奏が終わり、一通りのカーテンコールが終わった後、演奏者の鈴木さんが会場の聴衆にご挨拶の口上を述べた際、「皆様、大変お疲れ様でした」とおっしゃって、思わずこの一言にクスッと笑ってしまった。客席からも、同じく小さな笑いが溢れていた。