クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2023/9/9 藤原歌劇団 二人のフォスカリ

2023年9月9日   藤原歌劇団   会場:新国立劇場
ヴェルディ  二人のフォスカリ
指揮  田中祐子
演出  伊香修吾
管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団
合唱  藤原歌劇団合唱部、二期会合唱団、新国立劇場合唱団
上江隼人(フランチェスコ)、藤田卓也(ヤコポ)、佐藤亜希子(ルクレツィア)、田中大揮(ロレダーノ)、及川尚志(バルバリーゴ)   他

 

保守的で、椿姫と蝶々夫人とボエームを回しているイメージしか湧かない藤原歌劇団。そんなオペラ団体が、本場の欧州でも滅多に上演されない「二人のフォスカリ」をやるという。

いったいどういう風の吹き回しであろうか・・・。
新国立と二期会との共催イベントだからか?

まあとにかく、やってくれるというのなら、ありがたく観させていただく。国内カンパニーのオペラ鑑賞も5月の豊橋の「アンドレア・シェニエ」以来で、久しぶりだ。


それでは公演の感想。まず歌手について。
上江さん以外、今回初めて聴く方ばかりであったが、皆さん結構立派に歌いこなしていて、感心した。
「親父さんの方」を歌った上江さんは、日本のトップバリトンの一人。これまでにリゴレットやフィリッポ2世、ルーナ伯爵など、幾つかのバリトンの重要な役を聴いているが、今回が一番良かったと感じた。老人役にしっかりと対処し、老境の枯れた円熟っぽさを上手く表現して、見事だった。

「息子の方」を歌った藤田さん。高音域にムラがあったり、平べったい歌い方だったり、という傾向は散見されたものの、喉をパカンと開いて朗々と響かせることが出来る才能は捨てがたい。日本のテノールは層が薄いから、是非もっと頑張ってほしい。

今回、日本人歌手にありがちな歌い方のヘンな癖、「真正面の客席を向き、棒立ちで、左右の両手をかざして歌う典型ポーズ」が全体的にほとんど見られなかったが、え? 何? どうしちゃったの? って感じ(笑)。
指揮者か演出家が指摘したのだろうか。 まあとにかく、ええこっちゃ。


指揮者の田中さんも、今回初めて拝見した。4階席だったのでピットの中は覗けず、どんな指揮ぶりなのか、その様子を伺うことが出来なかったが、十分に音楽的だったと思う。
あとは、ヴェルディの初期作品らしいパッションのほとばしりが自分的には少々足りないと思ったが、どう表出させるかは指揮者の解釈に基づくさじ加減なので、別に文句は言わない。そもそも作品に潜むテーマが「老いの悲哀」だから、あえて抑えめにしたのかもしれない。


演出について。
実は観る前に、演出家のインタビュー記事(ぶらあぼ)を読んでしまったため、演出家がこの作品をどのように捉えているかについて、事前知識が入っていた。
それによると、演出家の見立て、ポイントは「公私の区別」なのだという。「政治家には公私の区別が強く求められ、同時に、それを徹底することは時に過酷な状況を引き起こすこともあるという、現代にも通ずるテーマ」(※ぶらあぼから抜粋)だとのこと。ふーん、そうかい、なるほどねえ・・。

で、じゃあ、その公私の区別問題を実際にどのように舞台で表現するか、結構注目して観ていたのだが、残念ながら、あまり主張が伝わってこなかった。
なんで? そこを強調するのが、演出家がこだわるべきところなんじゃないの?
それともアレかい、深読みを無理に押し出すと、独り善がりの読替えに走ってしまうかもしれないということで、中途半端に陥ったか?

仕方がないのかねえ・・。日本のお客さんは現代演出が苦手だし、所詮は藤原だしねえ・・。

ただ、現代的に読み解こうとする演出家の姿勢は伺えた。まだお若そうなので、これからの活躍には期待したい。是非作品に新鮮な解釈を吹き込む演出をしてほしい。


最後に、歌手のアリアの一つ一つが終わると、いちいち毎回必ず「ブラヴォー! ブラーヴァ!ブラヴィー!」が飛んでいたのだが、これっていわゆる一つの「サクラ」ってやつですか??