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2023/8/6 都響(サラダ音楽祭)

2023年8月6日   東京都交響楽団(サラダ音楽祭)   東京芸術劇場
《TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2023》
指揮  大野和士
合唱  新国立劇場合唱団
金森穣(ダンス)、井関佐和子(ダンス)
小林厚子(ソプラノ)、山下裕賀(メゾ・ソプラノ)、村上公太(テノール)、妻屋秀和(バス)

バッハ  管弦楽組曲より 序曲、エア(マーラー編曲版)
ドヴォルザーク  スターバト・マーテル


サラダ音楽祭のサラダとは「Sing and Listen and Dance」の頭文字を取った略。「歌う!聴く!踊る!」「誰でも楽しめる音楽祭」をコンセプトにして2018年に創設された音楽祭、らしい。

初めて聴きに行った。フェスティバルの名前は知っていたが、自分の範疇外、関心の対象外、見向きする必要がないものだと思っていた。
「誰でも楽しめる音楽祭」というのは聞こえがいい。が、所詮はお子様を含めた「広く浅く」の初心者向けにすぎない。
実際、二日間の日程で東京芸術劇場とその界隈で開催されるフェスティバルの総合スケジュールを見渡しても、「楽器体験コーナー」、「0歳から入場可の演奏会」、「広場などで行われる無料コンサート」みたいなプログラムが並んでいる。それらは自分にとって、まったくどうでもいい、眼中にないものである。


だが、本公演の「スターバト・マーテル」は、一体どうだ。およそ初心者向けではない大曲。「え!? それやるの??」みたいな驚き。
しかも、ソリスト4人は、全員日本を代表するトップ歌手ときている。

ならば行くしかない。8月は、私が普段聴くようなコンサートは本当に少ないから、なおさら楽しみな公演となった。


その前に前半、ダンス付きのバッハのエア。
有名な舞踏家による本格的なものだが、ダンスというジャンルにさほどの興味がない私にとって、それは単なる演奏の添え物でしかない。
おそらく選曲やダンスの振付けの中に、この日の原爆犠牲者への哀悼が入っていたのではないかと思われるが・・・申し訳ない、感想は特に無し。
(ダンスについて、その芸術性を語るほどの感性を持ち合わせていないのだ。残念なことに・・。)


メインの「スターバト・マーテル」。
御存知のとおりドヴォは私の苦手な作曲家で、曲の中のメロディに民謡のようなクサイ旋律が出現すると、いつも背中がムズ痒くなるのだが、このスタバは例外。かなりまともに聴ける。レクイエムと双璧の傑作だと、私は高く評価する。


さて、演奏であるが、特にオーケストラに関して、正直、緩さを感じた。いかにも伴奏に回っている感じがして、清らかな美しさは聞き取れるものの、「聖母の悲しみの祭日」を偲ぶ厳粛さは無い。十分なリハーサル時間の確保の問題だったのだろうか。

一方で、演奏全体を引き締め、リードしたのは、合唱とソリスト陣だ。
聖なる音楽の畏敬の念を表出した透明感のある歌唱は格調高く、普遍性があり、訴求力があり、あたかも教会で聴いているかのように心を揺さぶられた。


もしかしたら、私が感じた「オーケストラの緩さ」については、全体的な構成やバランスも含めて、指揮者がそういう音楽観を体現して見せたと、単純に結論付けられるのかもしれない。

なぜなら、大野さんの指揮でこれまでにもたくさんの公演を聴いてきて、その中に自分的にイマイチなものがあっても、それは受け手の捉え方にズレが生じているだけで、発出している指揮者の方向性にブレが無いことが多々あるからだ。
少なくとも、音楽に対するアプローチに関して、常に真摯で、決して抜かりは無い。大野和士とは、そういう指揮者だ。

ならば、「オーケストラの緩さ」と「演奏全体を引き締め、リードした合唱とソリスト陣」は一体的なものとして、そういう音楽を指揮者が作ったと、この際納得することにしよう。それならそれで、わたし的には何の問題もない。