2023年7月22日 東京交響楽団(フェスタサマーミューザ) ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮 ジョナサン・ノット
チャイコフスキー 交響曲第3番「ポーランド」、交響曲第4番
プログラム選定に強いこだわりを持つノット。
そんな彼が大衆性のあるチャイコフスキーを手掛けるというのは、少々意外に見える。
だが、そこはさすがというか、ノットらしい独自性を発揮。
広く人気があるチャイコフスキーだが、「自分がやるからには、悪ぃけど一般ウケしそうな迎合はしねぇよ」みたいな自負が透けて見えて、面白い。
録音盤などで世にはびこっている、いかにもチャイコらしいきらびやかなで派手な着色と、スラブ的な旋律の強調。こうした装飾を削ぎ落とし、素の味わいを表出させようとするアプローチ。
壮大な高揚感をあえて消し去った結果、あたかもブラームスの交響曲のような優美さ、室内楽的な親密さが滲み出る。
もしかしたら、これが素顔のチャイコフスキー?
ノットが手掛けた既成概念への挑戦。
当日、プログラムと一緒に配布されたチラシに掲載されたインタビュー記事に「自分はカラヤンのレコーディングを聴いて育ちましたが、改めて聴き直してみると、私を納得させる演奏ではありませんでした」とあった。
そうか、これってカラヤンへのアンチテーゼの意味もあるんだな・・・。
いずれにしても、してやったりのジョナサン・ノット。カーテンコールでの誇らしげな表情が、充実した成果を物語っていた。