2023年6月25日 新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール
指揮 シャルル・デュトワ
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンスキー 組曲 火の鳥
ベルリオーズ 幻想交響曲
N響の常任指揮者・音楽監督として毎年来日し、素晴らしい演奏を聞かせてくれていたデュトワだったが、例のセクハラ問題が起きて以来、N響からはすっかりお呼びがかからなくなってしまった。
さすがはN響、コンプラにうるさい国営放送のお抱えオケ。
そういうNHKはNHKで、体質的に色々問題がありそうだが・・・まあそれはさておき、今も変わらず形だけは「名誉音楽監督」として、指揮者陣の中にその名が残っている。
単なる置きっぱなしなのか、それとも何らかの思惑でもあるのか・・。
そうこうしているうちに、「鬼の居ぬ間に」じゃないけど、大阪フィルと新日本フィルが、「そんなら是非うちに来て!」とばかり、ちゃっかり唾を付けてきた。
まったく問題がないわけではないだろうが、それよりも、こんなすごい指揮者を放っておく手はない。芸術的観点によるメリットが勝った。
で、それは芸術的観点において、完全に正解だった・・・。
86歳のデュトワ、恐るべし。その年齢をまったく感じさせない、衰え知らずの溌剌としたタクト。音楽は生彩に富み、壮麗かつ格調高い。
驚嘆するのは、N響であろうが新日本フィルであろうが(フィラ管、ボストン響、サイトウ・キネンであろうと)、しっかりとデュトワの音になること。
よく「デュトワ・マジック」「音の魔術師」などと称えられるが、いいや違う。マジックを駆使しているのではなく、リハ段階で細かく響きを追求し、そういう音を築き上げているのである。
その妥協を排した徹底的な要求に対し、新日本フィルが全力で応え、完璧な回答を導き出していた。
各パートに首席、副首席、フォアシュピーラーを惜しげもなく配置。在籍する4人のコンサートマスター全員が揃って第一ヴァイオリン前方に並ぶ壮観さ。最大級の臨戦態勢を整えての演奏は豪華絢爛、圧巻の威力。
メインの「幻想」は、このオーケストラが装備する演奏能力の最高水準ではなかろうか。文句なしの名演である。
演奏後は大きな拍手喝采に包まれ、ブラヴォーも飛んだが、これがコロナ前だったら歓声はもっと爆発的だったことだろう。お客さんの中に、まだ躊躇感がある。
そもそもホールが「ブラヴォーする時はマスク付けて」みたいなアホらしい注意喚起を未だアナウンスしているし。
街中で常時マスクを付けている人は、少しずつ減ってきているものの、まだまだ多数を占めている。コロナ前の状態に戻るのは、もう少し時間がかかりそうだ。