クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/5/22 二期会ニューウェーブオペラ

2021年5月22日   二期会ニューウェーブオペラ   めぐろパーシモンホール
ヘンデル   セルセ
指揮  鈴木秀美
演出  中村蓉
管弦楽  ニューウェーブバロック・オーケストラ・トウキョウ
新堂由暁(セルセ)、櫻井陽香(アルサメーネ)、和田美樹子(アマストレ)、高橋翔平(アリオダーテ)、牧野元美(ロミルダ)、雨笠佳奈(アタランタ)、菅原洋平(エルヴィーロ)


バロック・オペラの魅力を知る機会を私達に提供してくれる二期会ニューウェーブオペラ。鈴木秀美の指揮によるヘンデル・シリーズは、「ジュリオ・チェーザレ」、「アルチーナ」に続き、これで3回目だ。

ヘンデルのオペラと言えば、昨年11月にBCJが鈴木優人氏のプロデュースで「リナルド」を上演した。また、2005年のニューウェーブオペラでは、鈴木雅明指揮のBCJでも「ジュリオ・チェーゼレ」をやっている。
つまり、これはもう二期会というより、とにかく鈴木一族の専売特許みたいになっちゃっているのだ。

おいおい、誰か他にいないんかい!? 「やあやあ、我こそは・・」みたいに名乗りを上げる勇敢な者は!?

古楽演奏」という壁があると思っているんじゃないの? そこに怖気づいているから、結局彼らの独壇場になっちゃうんじゃないの?
別にこだわらなくたっていいじゃん。普通の楽器でいいじゃん。バロックの専門家でなくてもいいじゃん。
形式は何でもいいからさ、もっとやろうよ、バロック・オペラ。楽しいよね。音楽は分かりやすいし、物語も一見複雑そうだが実は単純で他愛のないものばかりだし。(三角関係、四角関係のラブストーリーばっか)

えー・・・どうやら名乗りを上げる勇敢な者はまだ現れないみたいなので、仕方がない、やっぱり鈴木一族にもうしばらく頑張ってもらいましょう。
(来年、新国立劇場グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」の上演が予定されているが、これもまた指揮が鈴木優人さん。)


今回のプロダクションは、演出に舞踏家の中村蓉さんを起用したのがポイント。
二期会は、以前にもH・アール・カオスというダンスパンパニーを率いる大島早紀子氏を起用するなど、オペラとダンスの融合に積極的に挑戦している。

この試みは面白い。
そして、今回も見事に吉と出た。

大島さん演出では、ダンスパートは完全に自カンパニーに任せるのに対し(めっちゃアクロバティックなので当然だが)、今回の中村さん演出は、専門ダンサーを配置しつつ、ソリスト歌手たちにも躊躇なく踊りの振り付けを施している点が特徴だ。

歌手の皆さん、大変だったと思う。相当の練習量を求められたのではないだろうか。
振りを覚えるだけでも大変であろうに、それを自然に身体が動くくらいにまで叩き込み、それでなおかつ歌う。
本当によく頑張ったと思う。ぎこちなさは皆無だった。しかも表情も生き生きとして楽しそうで、まるでミュージカル。

そうなのだ。オペラの舞台に立っている人たちって、ある意味、歌唱芸術のスペシャリストなわけだが、オペラである以上は、演技や踊りが出来なければダメなんだ。人は音楽を聴いて感動するが、物語や演技でも感動できるし、決して侮れないものなのだ。

ニューウェーブと名付けられているとおり、ソリスト歌手たちはオーディションを勝ち抜いた若手の皆さんだが、今回のチャレンジはきっと彼らの肥やしになったはず。今後の舞台出演の際に必ず役に立つであろう。


ところで、セルセ(クセルクセス)といえば、「オンブラ・マイ・フ」。
私はキャスリーン・バトルが出演したニッカウイスキーのCMをリアルタイムで見た世代。
それはいいとして、今回の舞台では、演出においても、あるいは音楽においても、この「オンブラ・マイ・フ」が出発点であり、全体の肝であった。
序曲が終わってすぐに、プラタナスの木の下で歌われるこのアリア。重要な役割を担っているダンサーたちは、このプラタナスの枝であり、かつ木の精という設定。
そして、終幕のエンディングで、あたかもアンコールのように、本来は無いセルセのアリア「オンブラ・マイ・フ」をもう一度。

聴衆は、しっとりとした美しい旋律とともに、印象として強く心に残ったのではなかろうか。
そして、これがまさに制作側の狙い、ドンピシャだったというわけ。