2022年5月21日 新国立劇場
グルック オルフェオとエウリディーチェ
指揮 鈴木優人
演出 勅使川原三郎
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
ローレンス・ザッゾ(オルフェオ)、ヴァルダ・ウィルソン(エウリディーチェ)、三宅理恵(アモーレ)
演出に日本を代表するダンサー兼振付師の勅使川原三郎を起用し、更にハンブルク・バレエのプリンシパルであるアレクサンドル・リアプコも迎えてのプロダクションということで、注目されていた公演。
特にリアプコはバレエ界ではその名を轟かせている第一人者のようで、ネット界隈でも「リアプコが来る!!」と結構話題になっていた。
残念ながらバレエにそれほど興味が無い私にとっては、本公演はあくまでもグルックのオペラの鑑賞。私自身、バロック音楽は積極的に聴くというほどでもないが、それでも新国立劇場がなかなか上演しようとしないことに対しては、いささか物足りなさを覚えていた。この秋にはヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」(延期公演)も予定されているし、もっともっと鑑賞機会が増えてほしいと願う。
そういうことで、あくまでもグルックの音楽に着目するに当たり、本公演の指揮として鈴木優人さんを起用したことは成功と言えるだろう。モダンオーケストラの演奏をバロック様式に変換するには、やはりバロック音楽に通じた人でないと、なかなか上手くいかないと思う。音楽はきめ細やかにまとめ上げられ、開放的かつシャープ。いつもの新国立のピットの中から、鮮やかなバロック音楽が聴こえる。しかも、演奏しているのは、あのいつもの東京フィル。
なんとも言えず不思議な感覚でありながら、それでも心地よい調べに酔った。
主役のオルフェオとエウリディーチェの両外国人キャストも素晴らしい。特に、オルフェオのザッゾが素晴らしい。これぞカウンター・テナーという歌唱。スペシャリストらしく、「さすが慣れているな」という印象だ。
演出について、であるが・・。
勅使川原さんの起用ということで、「まあどうせ、こんな舞台になるだろう」という予想が出来てしまい、で、笑ってしまうくらい予想どおりの舞台だった。
バレエのダンサーや振付師が演出すると、もうほぼ100%思惑が「舞台に踊りをどのように当てはめるか」に注がれることになる。つまりコラボレーションが全てであり、それ以上がない。作品の新たな視点の創出だったり、解釈に基づく斬新な展開というのがない。
もちろんダンスを挿入することで、そこに歌だけでは見えてこない心情表現が視覚的に表出される面白さはあるわけで、それこそが狙いなのだろうが、「結局そこまでなんだろうな」と感じてしまう。
バレエの振付ではなくオペラの演出を見たかった、というのは望みすぎなのだろうか・・・。