クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

1990/11/25 ウィーン3

ウィーン三日目。日曜日。
毎週日曜の朝に王宮礼拝堂で行われるミサを見ようと出掛けた。

キリスト教の国に旅行すると、観光で日曜日に教会の中に入ろうとしたら、「ちょうどミサをやっていました」というのは、あるあるパターン。ちゃんとお祈りをしたい人はもちろん参加できる。ひやかし観光客の場合も、後ろの方でこそっと覗くだけならば、お咎め無しのところが結構多い。(お咎めする教会も、たまにある)

ここウィーンの王宮礼拝堂は、観光客向けにミサの観覧チケットを販売している。
目玉となっているのが、ミサの伴奏を担当しているカンマー・オケ「ホーフムジーク・カペレ」と、ウィーン少年合唱団だ。ホーフムジーク・カペレには、ウィーン・フィルの奏者が参加しているという噂もある。

観光ガイドブックにもしっかり掲載されていて、「あのウィーン少年合唱団が聴ける!」みたいな宣伝文句が踊っている。私もこれにまんまと引っ掛かり、思わずチケットを買ってしまったというわけ。別に、真剣にウィーン少年合唱団が聴きたかったわけではない。あくまでも興味本位。

この王宮礼拝堂ミサ見学のことについても、何を隠そう以前のブログ記事に書いている。何だか重複するお話ばかりで申し訳ない。ご勘弁。今回も旅行記として体裁を作りたいので、転載し、多少の加筆修正を施して再掲させていただく。


チケットは前日に買っておいた。席種のカテゴリーがいくつかに分けられていて、どのカテゴリーを買ったのか、いくらだったかは、正確には覚えていない。なんとなく真ん中くらいのカテゴリー、3千円くらいだったような、微かな記憶がある。


「嘘だろ!? マジかよ!?」

自分の席に案内されて、絶句してしまった。そこは礼拝堂内ではなく、別室の小部屋だった。10人くらいが座れるスペースだろうか。
小窓があって、礼拝堂に面しており、そこから直接見下ろせば、礼拝の様子を眺めることが出来る。
だが、それが出来るのは、小窓の目の前に着席する最前列のたったの2、3人のみ。残りの人はまったく見ることが出来ない。指定席なので、勝手に窓側に移動することもできない。
各部屋にはモニターTVが設置されている。直接覗けない連中は、「そのモニターを見よ」である。
聞こえてくる司祭のお話も、礼拝の音楽にしても、ウィーン少年合唱団の歌声にしても、すべては窓越し。臨場感、ゼロ。

これはひどい。騙された。どう考えても、こんなの詐欺だろ!?」

予めチケットを買う際に、ちゃんと「直接ミサの様子を見られない席です。音も窓越しです。」という条件を説明され、しかも相応の安席というのなら、別にいいだろう。それを承知で買った自分の責任になる。
だが、そんな説明は一切なかった。しかも自分は決して安カテゴリー席を買っていない。
これでだいたい3千円なのだ。ムジークフェラインの立見席より高いのだ。
ありえない。そんなの無しだ、無し。

小部屋内の自席の椅子に座り、小さなモニターをぼーっと眺め、小窓から漏れてくる音を聴きながら、沸々と湧き上がる怒りを抑えてじっと堪える私。今考えれば、明らかに時間の無駄だったと言えよう。とっとと退散すればよかった。

ミサ終盤に差し掛かると、今度は各部屋に籠を持参した人が回ってきた。献金である。
キリスト教のミサではこれを行うのが常。なので、それ自体を否定はしない。
だがこの時は、火に油を注がれたような気分になった。「こんなお粗末な扱いをしておいて、まだ金をせびるのか、コノヤロー」ってなもんである。当然無視。

ちなみに、ウィーン少年合唱団が陣取っているのは、礼拝堂の後方最上階。彼らが歌っている姿は、高い席を買おうが安い席を買おうが、ほとんどのエリアで見えません。そういう意味でも、期待は裏切られる。


さ、さ、気を取り直して、観光を続けよう。

ガイドブック「地球の歩き方」に、「世界一美しい図書館」と紹介されている国立図書館プルンクザール。
ここも、観光客向けに歴史的な書物を収蔵している豪華なホールを有料で公開している。

地球の歩き方によれば、入り口に入場券を買う場所があって、購入後に階段を登り、ホールに向かう、ということになっている。
ところが、行ってみると、入り口にそんなチケット売り場は見当たらなかった。
そのまま階段を登ると、内部の豪華なホールが見えるその場所に、なんとなく係員用らしきデスクが置いてあったが、そこに人はいなかった。

「おや~!? チケット買いたいんだけどなあ・・・。どうしたらいいのかなあ・・・」
なんて呟きながら、恐る恐るホールに侵入。

世界一美しい図書館プルンクザール、見れてしまった。タダで。
スミマセン。
でも、チケット買う場所見当たらなかったし、係員もいなかったし、そりゃしょーがねーよな。「タダでどうぞどうぞ」と言われているようなもんだろ。
王宮礼拝堂で詐欺紛いにあったのだから、それくらい勘弁しろよ。な。
じゃ、そういうことで(笑)。


この日の観光は、この後、王宮見学、ハプスブルク家墓所カプツィーナ教会、グラフィックアート美術館アルベルティーナ、演劇専門のブルク劇場のガイドツアーなど、巡りまくり。
今と違って、当時は若くて体力もあったので、夜の公演のことも気にせず、めいいっぱい観光で歩き回っていた。

あー、あの頃の若い自分に戻りたい。