クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

東京フィルの決断

今月の東京フィル定期演奏会マーラー交響曲第3番を振る予定だったチョン・ミョンフンの来日が叶わず、昨日に公演中止が発表された。
これはある程度、いや、完全に想定されていたことだった。
オミクロン株対策として政府が導入した外国人入国禁止措置は、当初は12月末までだったが、当然これに留まらず、1月も継続。更なる再延長も不可避の情勢だった。
外国人指揮者やソリストなど演奏家を招く予定だった主催団体は、相次いで公演中止や演奏家の代替を発表。我々ファン、愛好家も、「こりゃ東京フィルのチョン・ミョンフンもダメだわな・・」ととっくに諦め、冷静に状況を見つめていたのであった。

にも関わらず、当の主催者である東京フィルは、なかなか正式発表しなかった。1月中の解除どころか、逆に再延長「2月末まで」と政府が発表したところで、ようやく中止の決断に至ったわけである。


これについて、一部SNSなどネット上で「発表が遅い」「いったいどうなっているのかの情報提供、報告が無い」などの声が上がった。

確かにファンからすれば、どっちつかずのままなかなか正式発表されないのはヤキモキする。「早く決めてくれないと、自分の予定が組めない」といった問題も生じるので、そうした声はやむを得ない部分もあろう。概ね理解するものである。

一方で、他の団体が早々に招聘を諦める中、東京フィルだけが簡単に諦めず、望みを捨てず、最後の最後まで可能性に賭け、当局との交渉をギリギリまで続けていたのだとしたら、私なんかはその心中を察し、労いたい気持ちでいっぱいになる。その発表の遅さゆえに、無念さ、悔しさがひしひしと伝わってくるのである。
それは、以前に放映されたNHK-BS1スペシャルの、コロナに見舞われた東京フィルとチョン・ミョンフンの公演の開催実現に至るまでを収めたドキュメンタリー番組を観た方なら、きっと分かるだろう。彼らの奮闘ぶり、努力、そして苦悩は、大いに共感できるのだ。


公演の中止を簡単に決めたくないというのは、単純に彼らの経済的な死活問題に関わるから、というのもあるだろう。
だがそれ以上に、「マエストロと共に音楽を作りたい、音楽の真髄を極めたい」という情熱の表れではないか。
だとすれば、これぞまさにプロ演奏家の矜持と言っていい。

そういうわけだから、彼らにとって、指揮者の変更、プログラムの変更はありえない。チョン氏の代わりはいない。よって中止にする。忸怩たる思い、苦渋の決断であるにせよ。

この潔い決断に、私はうっすらと感動を覚える。本当は相応しくないかもしれないが、思わず拍手を贈りたい衝動に駆られる。


個人的な本音を言えば、外国人入国禁止措置なんかしたって、オミクロン株は絶対に入ってくるし、実際入ってきて蔓延している。だから、そんな出来もしないゼロコロナではなくwithコロナ、どうやって対処し、経済との両立を図るかを検討する方がよっぽど重要なんじゃないかと思う。一流演奏家の演奏も聴けないという悲しい思いもあるし、しわ寄せを飲食店に一方的に押し付けるやり方も何か違うと思うし、私自身は我が国のコロナ対策に不満を燻ぶらせている人間だ。

だが、少なくとも外国人入国禁止措置に限っては、残念なことに国民の大多数が賛成・支持。私は少数派なのである。だから、仕方がない。

ここは我慢して待つしか方法がない。
チョン・ミョンフンのマラ3、聴きたかったよな・・・。