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2020/10/3 小山実稚恵 ピアノリサイタル

2020年10月3日   小山実稚恵 ピアノリサイタル   オーチャードホール
ベートーヴェン   ピアノソナタ第30番
バッハ   ゴルトベルク変奏曲


ベートーヴェン、そして」というタイトルを銘打った全6回のシリーズリサイタルで、その第3回目。各回にもタイトルが付けられていて、今回は「知情意の奇跡」。

6回シリーズのプログラムを組むにあたり、タイトルもそうだが、その一大構想について、相当に深く、そして入念に研究、洞察したことが伺える。また、それが意気込みとなって、ひしひしと伝わってくる。
単に個々の作品の解釈に力を込めるだけでなく、時代や背景、現代社会との関わりやつながりなどにまで踏み込み、「今、その作品を採り上げることの意味、意義」を探ろうとしているわけである。
このような壮大なチャレンジは、まさに演奏家としての円熟期に差し掛かった小山さんの決意そのものに他ならない。「それを行うことこそが、演奏家としての使命」という宣言なのだ。

今回は、軸となるベートーヴェンソナタに、バッハのゴルトベルクを加えるという試み。

一見すれば、「第30番」と「30の変奏」という数字の関連や、ベートーヴェンの第3楽章が変奏曲となっている形式の関連などが容易に見えてくるが、そうした表面的なことだけでなく、「バッハがベートーヴェンに繋いだ物は何か」というところまで見据えていることは間違いないだろう。

それゆえ、彼女の演奏からは、インスピレーションやパッションといった即興的な物はほとんど聞こえず、あたかも論文のような理知的な識見が全面的に打ち出されていた。
例えば楽章ごとの変化や、変奏の繋ぎ方など、これら一つ一つに確たる理由と根拠があって、おそらく説明を求めればそのすべてを詳らかにしてくれると思うが、いずれにしても披露されたのは、隙がないくらいの完成品であった。

ただ、残念なことに凡人の私には、結局、タイトル「知情意の奇跡」とはいったい何だったのか、その演奏からは理解が出来なかった。ちょっと哲学的過ぎて、難しい・・・。

ということで、聴いている途中から「いいや、考えるの、止めよう」と諦め、単純にバッハの音楽に身を委ねた結果、最終的な感想は「ゴルトベルク、やっぱいい曲だよな」でした(笑)。

ま、凡人だからな、オレはさ。