クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/6/12 N響

2021年6月12日   NHK交響楽団   東京芸術劇場
指揮  下野竜也
フィンジ   前奏曲
ブリテン   シンフォニア・ダ・レクイエム
ブルックナー   交響曲第0番


珍しい作品、いわゆるレア物をプログラムに据えることで、自らの方向性、スタイル、キャラを完全に確立させてしまったシモーノこと下野さん。
人とは違う自分の領分、居場所を確保し、それによって確かに個性は際立っている。世の中にはレア物好きの人も少なからずいるだろうし、オーケストラだってレパートリーを新規開拓したいだろうから、一定のニーズはあるのだろう。実際彼は多くのオーケストラからお呼びがかかり、活躍しているわけである。

だが、個人的に「なんだかなあ・・」と思う。困惑の一言。
私はレア物好きではない。これまでに聴いたこともなく、作曲家の名前さえ知らず、どうせ今後も聴く機会がほとんどないような作品は、はっきり言うが、私にとってどうでもいい。
例え聴いて「あ、いい曲だな!」と感じたとしても、その1回限りで終わってしまい、もう二度と聴けない作品の鑑賞に、いったいどれほどの価値があるというのか!?

ところが、最近はどこのオーケストラも、こうしたレア物をプログラムに積極的に採り上げるようになってきた。傾向、流行、風潮と言ってもいい。

これって、シモーノさんの功績なのか!?
やれやれ。


そんな下野さんのコンサートだが、時々「おー、これはいいな。これなら自分的にオッケーだな。」というのがある。(滅多に無いが)
この日のプロは、まさにそうしたものだった。(一曲目は、まあアレだが)

プログラム曲目の選考はさておき、下野さんが作る音楽は曖昧さがなく、フォルムがしっかりとして、毎度完成度が高く、感心する。
この日のブリテンも、ブルックナーも、立体感の構築が素晴らしい。
まるで、一級の建築士のようだ。
スコアという平面に書かれた設計図から、土台を固め、柱を立て、空間を作り、外装と内装を美しく施していく。仕上がりは万全なのだ。


もしかしたら下野さん的に「ブル0」はレア物扱いとしての採り上げだったかもしれないが、私はこの曲結構好きだ。他のブルックナー作品と比べても決して遜色ないと思う。
にも関わらずこの曲がマイナーの扱いにされてしまう原因は、「0番」というちょっと困ったナンバリングのせいではなかろうか。

この日配布されたプログラムの曲目解説によれば、元々第1番の次に作曲され、作曲家自身が自筆譜に「第2番」と記したが、後年に「0番」に直し、無効、取り消し扱いにした、とのこと。へえ、初めて知りました。

もしこの作品が普通に「第2番」になっていれば、その後の作品番号が一つずつ繰り下がって、「交響曲が第9番でストップする伝説」の作曲家群から外れたかもしれない、というわけか。
それはちょっと面白い。