今月に来日し、デュオ・リサイタルやデュオ・コンチェルトなどの演奏を行う予定だったウィーン・フィルの木管コンビ、ダニエル・オッテンザマー(クラリネット)とソフィー・デルヴォー(ファゴット)。残念ながらコロナによる入国制限措置で来日が叶わず、一連の公演は中止になってしまった。私は、彩の国さいたま芸術劇場でのデュオ・リサイタル公演(6月26日)に行く予定だった。
デルヴォーが演奏するファゴットという楽器は、オーケストラのパートの中でもかなり地味で、あまり目立たない。だから、私も普段はファゴットの音に聴き入ることも注目することもほとんどないわけである。
ところが、あるウィーン・フィルのコンサートで、その麗しい音色に驚き、「うわー、この人めっちゃ上手ぇ~!」と聴き惚れ、その奏者の名前を慌てて確認したことがあった。
それがソフィー・デルヴォーであった。
そして、もう一人のアーティスト、ダニエル・オッテンザマー。ご存知、超が付くサラブレッド。
だいたい父がウィーン・フィルの元首席、弟がベルリン・フィルの首席、自分もウィーン・フィル首席って、どんだけ凄いクラリネット家族なの??
そんな二人のリサイタルは、楽しみだった。本当に残念だ。
ここで、ふと疑念が沸いてくる。
なぜ彼らは来日出来なかったのだろう。なぜ彼らは入国が認められなかったのだろう。
スケジュール上、待機隔離のため2週間以上の日程を確保し早めに来日することが出来なかった、あるいは出演者がそもそも2週間の待機隔離を受け入れられなかった、というのなら仕方がない。
そうではなく、本人たちは2週間の待機隔離を受け入れる覚悟だったのに、日本側当局の決定で外国人入国制限の対象にされ、ビザが下りなかったのだとしたら、「なぜ??」と思ってしまう。
ちゃんと入国が認められて、国内公演を行っている外国人アーティストが現にいるからだ。
バレンボイムやムーティといった特例VIPはとりあえず置いておき。
ジョナサン・ノットやバッティストーニ、ヴァイグレ、ヤルヴィといった指揮者たち。
まあ彼らは各団体の首席指揮者だから、「絶対に不可欠」という申請申立てがあり、それが認可されたのだろう。
そうではない人たちがいる。
例えばテノール歌手ヴィットリオ・グリゴーロ。彼は今月の公演のため、もう既に来日したらしい。
それからサントリーホールが主催するチェンバー・ミュージック・ガーデン公演に出演中のエルサレム弦楽四重奏団。
それ以外にも新国立劇場に出演する歌手、飯守泰次郎傘寿記念公演に出演したS・グールドなどの歌手たちも。
これに対し、オッテンザマー&デルヴォー、東京・春・音楽祭に出演予定だったマレク・ヤノフスキやその他の出演演奏家たち、アントニ・ヴィットなど客演として国内のオケを振る予定だった指揮者たちは、情報によれば、当局からの許可が得られず、泣く泣く来日を断念したらしいのだ。
この差は何?
認める認めないの基準は何?
いったいどこの誰が判断しているわけ?
政治力や強力な力添え、後ろ盾などがあれば有利なのか?
基準を明確にしろよ。そうじゃないと、楽しみにしていたファンを裏切ることになるし、関係者だって振り回されるし、損害を被ることにもなるんだぞ。
オッテンザマー&デルヴォーの彩の国さいたま芸術劇場公演、完売したんだぜ!?