クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2020/11/3 鈴木優人プロデュース 「リナルド」

2020年11月3日   鈴木優人プロデュース  BCJオペラシリーズ   東京オペラシティコンサートホール
ヘンデル  リナルド
指揮・チェンバロ  鈴木優人
演出  砂川真緒(ドラマトゥルク 菅尾友)
管弦楽  バッハ・コレギウム・ジャパン
藤木大地(リナルド)、森麻季(アルミレーナ)、中江早希(アルミーダ)、久保法之(ゴッフレード)、青木洋也(エウスタツィオ)、波多野睦美(魔法使い)、大西宇宙(アルガンテ)  他


普通のコンサート形式上演かと思ったら・・・びっくり。これ、フツーにオペラじゃんか!
欧州で活躍中の演出家菅尾氏にドラマトゥルクを依頼するなど、演出チームを立ち上げ、即席ステージを設け、出演者には演出プランに基づいた衣装を着せ、演技を施し、照明や小道具を効果的に使用して・・・。
うん、これ、間違いなくオペラだ。単に上演場所がコンサートホールだっただけ。
しかも、会場のロビーには、あちこちに観客が舞台設定に入り込めるような仕掛け(張り紙)を行う念の入れ様。

主人公のリナウドをフィギュア収集に凝る現代のオタク青年に仕立て、自宅に籠もってRPG(ロールプレイングゲーム)に夢中になりながら、フィギュアとして愛でているお姫様アルミレーナを救出する作戦の夢想が広がっていく、という演出ストーリー。

めっちゃ面白ぇじゃん!!


ここでついつい思い返してしまうのは、その前に観た野田さん演出の「庭師は見た!」。
(比較は申し訳ないが、わずか二日前の公演なんでね)
両方ともコンサートホールでのオペラで、演出を施し、しかも思い切った読替えを実践していたわけだが、リナルドが決定的に勝っていたことがあった。

それは、「上演の軸足が完全に音楽にあった」ということだ。

あくまでもヘンデルの音楽で勝負しているということ。見た目だけでも十分に楽しかったが、仮に見た目を排除したとしても、聴衆はヘンデルの音楽を十分に堪能することができたのだ。

まさにそこに、指揮者が成し遂げたことが現れている。
これを「指揮者の存在価値」と言い換えてもいい。

指揮者だけではない。歌手たちの真摯な取組みにも目をみはるものがあった。
各歌手のそれぞれの歌唱の中に役に対する思い入れが込められているし、旋律の鳴らせ方、節の回し方(アドリブのように自由に展開させていくテクニック)に、しっかりとした研究の跡が見えた。演技と歌唱の両面で役を突き止めよう、物にしようという姿勢が感じられ、それがひしひしと伝わり、素晴らしかった。


今回のリナルドを観て、私は、かつて積極的にバロックオペラをレパートリーに採用し上演していたP・ジョナス体制時代のバイエルン州立歌劇場を思い出した。
古楽の得意な指揮者I・ボルトンと組んでバロック特有の様式美にこだわりを見せつつ、演出的には読替え手法で現代の視点を採り入れる。古と新の融合。そしてルネッサンスの完成。

今回プロデュースした鈴木さんの狙いも、まさにそこにあったのではないか。

BCJのオペラシリーズは、今回がVol.2。これからも是非、我々にバロックオペラの楽しさを教えてもらいたい。