3月21日に放送されたNHK-BSのプレミアムシアターを観た。ミラノ・スカラ座の2020/2021シーズン開幕ガラ・コンサートである。
スカラ座のシーズン開幕は、毎年12月。今年度は当初、ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」(リッカルド・シャイーの指揮、ヤニス・コッコスの演出、リセッテ・オロペーサやファン・ディエゴ・フローレスらの出演)でスタートする予定だった。
しかし、コロナの影響で中止に。
やっていたら、可能であったら、是非とも現地で鑑賞したかった魅力的な演目であった。
予定どおりにシーズン開幕を迎えられなかったのは、世界中どこも同じ状況とはいえ、スカラ座にとって大きなショック、大きな損失だったはず。
だが、その代替公演で世界のトップ級歌手をこれでもかとばかりに集結させてみせたのは、いやはや、さすがは天下のスカラ座である。
(コロナのおかげ(?)でヒマになった歌手の出演アレンジメントがいつもより易しかったというラッキーな要因があるにせよ。)
とにかく、旬で選りすぐりの一流歌手が集った。そんな彼らが次から次へとステージに登場してくる様は、壮観の一言。
C・オポライス、C・ニールント、E・ブラット、S・ヨンチェヴァ、M・レベカ、E・ガランチャ、M・クレバッサなどといった女性陣。
R・アラーニャ、V・グリゴーロ、A・シャーガー、F・D・フローレス、P・ベチャワ、F・メーリ、C・アルヴァレス、L・サルシ、L・テジエ、I・アブドラザコフ、P・ドミンゴなどといった男性陣。
いやー、すごい。
当初の予定ではスター歌手J・カウフマンも出演予定だったが、キャンセル。さすがカウフマン、やっぱりカウフマン。こういうところ期待を裏切らないねえ。
フィナーレを除けばどの歌手も平等に持ち歌1曲のみなのに、ベチャワだけ2曲も歌って「ずるぃー」と思ったら、なんと、そのカウフマンの代わりだったみたい。
やっぱりお騒がせ男、カウフマン(笑)。
圧巻は、“レジェンド”ドミンゴで決まりか。
「アンドレア・シェニエ」のカルロ・ジェラールのアリアを歌った。いやー、痺れました。
つい先日、晩節を汚し、汚名返上できぬままひっそりとお亡くなりになった指揮者がいたが、こちらの氏もセクハラ疑惑で世間を賑わしたにも関わらず、依然として大御所として存在感を際立たせているのは、対称的。さすがはレジェンド。
総合演出として、演出家のD・リヴェルモーレが、ちょっとした装置と背景映像、演技を織り交ぜながら、いくつかのシーンごとに舞台を作ったのは、とても印象的で良かった。
その一方で、イタリア人俳優たちを参加させ、寸劇やセリフによって曲と曲の間を繋がせたのは、はっきり言って不要だったかな・・。(イタリア人は面白かったのかもしれないが)
おそらく観客がいなくて演奏後の拍手が無く、間が悪いので、苦肉の策でそうしたのだろう。
でもやっぱり不要なので、一通り観終わった後、録画した物に編集を加え、ぜーんぶカットしちゃいました(笑)。あと、バレエとかも。そうしたら、約3時間の収録時間が2時間ちょっとに短縮した。
出演者もそうだろうし、観ている我々もそうだが、せっかく素晴らしい歌手たちが素晴らしい歌唱を披露しているのに、拍手喝采、ブラヴォーがないというのは、本当に寂しいし、残念。観客がいたら、どんなに盛り上がったことか。
それと、指揮者のシャイーも、指揮の最中ずっとマスクを付けているので、映像的にはなんだか様にならない。
リハは別にして、本番は外しても良かったと思うけどな。マスク姿の指揮がそのまま記録映像に残っちゃうからね。
それとも、「今回は、こういう特殊で異常な事態だったのだ」ということをあえて強調させる演出だったのだろうか。
なんとなくそうとも思えてきた。