クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2021/3/20 東京・春・音楽祭

2021年3月20日   東京・春・音楽祭(国立西洋美術館共催)   東京文化会館小ホール
美術と音楽 ~春(ダフニスとクロエ)
佐野隆哉(ピアノ)、島田彩乃(ピアノ)
サン・サーンス   死の舞踏
ビゼー   アルルの女 第一組曲、第二組曲
ラヴェル   ダフニスとクロエ 第二組曲


もしかしたら、例年なら目に留まらない、足を運ばないコンサートだったかもしれない。
幾つかの岐点やポイントが重なったことで、本公演が目に留まった。

まず、コロナの影響で、外来公演を中心にたくさんのコンサートが中止や延期に追い込まれ、鑑賞の機会が減ったため、自分の中にあった「コンサートを選ぶ基準」のハードルが下がったこと。
次に、そんなわけで自分のコンサート計画も寂しくなり、3月14日の読響公演からその次の26日のシティ・フィルの公演までの間、予定が何もなく、ぽっかりと空いていたこと。
それから、本公演は国立西洋美術館との共催だったことから、元々は美術館内のロビーで行われる予定だったが、国立西洋が現在改修中のため、その結果、ちゃんとしたクラシック専用ホールで催行することになったこと。

このような運と巡り合わせが重なり、目に留まった公演だが、よくよく見るとなかなか凝っていて、企画に優れた興味深いコンサートである。

美術館との共催ということで、音楽と絵画に共通している題材をテーマにし、まず題材の絵について美術館のキュレーター(主任研究員)からの解説があって、その後に、今度はその題材を扱った音楽が演奏される。
今回で言えば、「ダフニスとクロエ」である。

これは、音楽だけでなく美術鑑賞も趣味の一つにしている私にとって、とても面白かった。

ダフニスとクロエについて、古代ギリシャの物語がモチーフになっていることは知っていたが、それを題材にしてミレーが描いた一枚の絵を通し、作品や物語の起源に迫る。これは、純粋に自分の知識や教養を豊かにし、好奇心を刺激してくれるものだった。
つまり、「一粒で二度美味しい」公演だった。


肝心の音楽だが、プログラムはどの曲も日頃からオーケストラ作品として、オーケストラの演奏として、自分の耳に馴染んでいる。
それを、ピアノデュオで演奏したわけだが、私はというと、ピアノを聴きながらオーケストレーションを想像している。頭の中で、オーケストラの響きを思い浮かべている。

一方で、聴いている自分とは異なり、演奏者はあくまでもピアノ作品としてアプローチし、譜面を追いかけ、楽器を響かせている。当たり前って言えば当たり前だが。
そこに面白さが出てきたのだ。
あちこちの箇所でオーケストラと異なるピアニズムを感じ取ることとなり、ハッとする。作品の新たな視点や魅力が見つかるわけである。

お客さんの入りが少なかったのが少々残念だったが、私は「行って良かった」と心から思えたコンサートだった。