クラシック、オペラの粋を極める!

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2021/1/3 都響(東京文化会館 響の森シリーズ)

2021年1月3日  東京都交響楽団
東京文化会館 響の森 Vol.47 ニューイヤーコンサート
指揮  飯守泰次郎
小川典子(ピアノ)
ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第5番 皇帝
ワーグナー  楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、歌劇「タンホイザー」序曲


ネット情報によると、指揮者の飯守さんは昨年末に病気で入院し、緊急手術をしたそうだ。
関係者やファンから心配の声が上がっていたが、こうして無事に指揮台に立った。まずはめでたしめでたし。
ただし、ステージに登場する際、歩き方に少々弱々しさが見受けられた。病み上がりなのだから、無理もない。しかも御年80歳。お身体、大事になさってほしい。
もっとも指揮者である以上、オーケストラに向き合い、指揮台に立つことが、きっとどんな良薬よりも効果がある、ということかも・・・。

幸いタクトには推進力があった。メインのワーグナーは御大の得意中の得意ということもあって、スケールの大きな音楽が展開された。私を含め、多くの聴衆が満足のいく演奏となったのではないか。

定期演奏会でもないし、おそらくそれほど多くのリハーサル時間は取れなかったはず。
でも、こういう時だからこそ、経験というか、成し遂げてきた実績というか、飯守さんの指揮者としての生き様がモノを言うのである。
ついでにはっきり言っちゃえば、もう指揮台に立つだけでいい。デンと構えて、睨みを利かせて、「フンッ!」と振ればいい。風格を見せつければいい。
これぞ巨匠の特権。飯守さんも、いよいよそういう指揮者になってきたというわけだ。


ところで、ふと思った。
コンサートでオペラの序曲や前奏曲を振る時、指揮者はその音楽を作り上げるにあたり、オペラ全体の構成や流れ、物語の中身というのを考慮するのであろうか。
それとも、あくまでもオペラの中身とは関係なく、単独曲として取り扱うのであろうか。

例えば、今回のプログラムの「マイスタージンガー」なんか、オペラの劇中に見られる喜劇的要素やお祭り要素のモチーフが前奏曲の中に盛り込まれているわけだが、これらを浮かび上がらせ、聴き手にオペラの物語を想起させるのか。それとも、喜劇作品のイメージを白紙にし、いかにもこの曲らしい勇壮な演奏に向かうのか。
これ、演奏上の一つのポイントのような気がするのだ。

ちなみに今回の演奏を聴いた私の印象では、後者のアプローチのように感じたが・・・果たしてどうだろう。


前半のコンチェルトは、ソリストの個性が際立った秀演。
小川さんのピアニズムは、とても精巧。スコアの読み込みがしっかりしていて、綿密な設計図のもとに構築され、隙がないのだ。それ故、説得力があって、圧倒される。とても良かったです。