クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2019/9/12 ROH ファウスト

2019年9月12日   ロイヤル・オペラ・ハウス   東京文化会館
グノー   ファウスト
指揮  アントニオ・パッパーノ
演出  デイヴィッド・マクヴィカー
ヴィットリオ・グリゴーロ(ファウスト)、イルデブランド・ダルカンジェロメフィストフェレス)、レイチェル・ウィリス・ソレンセン(マルグリート)、ジェルマン・E・アルカンタラ(ワグナー)、ステファーヌ・デグー(ヴァランタン)、ジュリー・ボーリアン(ジーベル)、キャロル・ウィルソン(マルタ)   他


ROHが「ファウスト」を引っ提げて来日公演してくれたことに感謝したい。私はこのオペラをこれまで2回しか観たことがない。
前回は12年前で、「首都オペラ」という団体が神奈川県民ホールで上演したものだったが、上演の出来が、まあ、いわゆる、なんつうか・・アレで、作品そのものが「つまんねえ」と感じてしまうものだった。(主催団体さんには申し訳ないけどさ)

やっぱり、上質のカンパニーによる上質のプロダクションは違う。なんたって作品そのものが「素晴らしいじゃん!?」と感じたのだからね。

もうとにかく、褒めたいことばっか。何から褒めますかねえ・・。

じゃ、まずパッパーノ。
この人、本当にオペラの音楽の鳴らし方を知ってるね。歌とオケと舞台の展開が一体化するような音楽作りなのだ。そのために、全方向に目配せし、常に気を使っている。
オペラ指揮者の中には、音楽的に引っ張る必要がないと思う箇所でアクセルを急に緩める人がいるが、パッパーノはきちんとしっかりと指揮をし、手を抜かない。完成度の高い音楽が出来上がるのは、いわば必然というわけだ。

演出のマクヴィカー。手堅い。実に、手堅い。
この人が良いのは、新進気鋭の演出家にありがちな「斬新な解釈を打ち出してやろう」という、変に肩肘張ったところが無いこと。ドラマに専念し、必要なことだけを施している。人の配置、動かし方、すべてが理に適っている。
演出は決して目立たないが、鑑賞した誰もが「いい舞台だった」という印象を抱く。これがきっとプロの仕事ってやつなんだろうね。

タイトルロールのグリゴーロ。彼の歌、初めて生で聴きました。いいじゃないですか。
巷でよく言われているとおり、情熱的で、勢いがある。輝かしさと甘美さの両方を備えている。パヴァロッティ2世という称号が相応しいかどうかはやや疑問だが。
そんな風に形容しなくったって、いいじゃないか、「The グリゴーロ」で。いけるいける。

ダルカンジェロも、さすがだよなあ。
彼の場合、キャラクターが完全に確立されているので、どの役でも「ダルカンジェロ」にしてしまうのだが、それでオッケーなのがやっぱりダルカンジェロ、というわけだ。

どうしてもこの主役二人の活躍に目が行きがちだが、実は脇役で隠れているけど、ステファーヌ・デグーとキャロル・ウィルソンの抜群の安定感と存在感を、決して見落としてはならない。
こういう舞台を支える名手をばっちり揃えてくるのが、一流歌劇場の証ってわけだ。