クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

ヴェッセリーナ・カサロヴァ

 新国立チェネレントラで来日中のカサロヴァ。本公演を見に行くのは明日で、事前ではあるのだが、彼女について書きます。(明日の公演、楽しみです!)

 初めて彼女を聴いたのは1998年7月のミュンヘンのオペラフェスティバル。
 ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」のジョヴァンナ・セイモウ役。主役はグル様ことE・グルベローヴァだった。
 既にこの時点において、彼女はザルツブルク音楽祭デビューも果たしており、彗星のごとく登場した若手スターとして脚光を浴びていた。だから上記の公演も、グル様はもちろんだったけど、カサロヴァとはいったいどんな歌手なのか、興味津々の注目公演だった。

 残念ながら、高い期待に添ってくれたとは言い難かった。
 グルベローヴァと並ぶと、どうしても霞んでしまうのである。カサロヴァ自身がグル様に遠慮しているようにも見えた。「別に、引き立て役でも構いませんよ」と言っているようだった。もともと目立つ役ではないし、カサロヴァ自身がまだ若かかったというのもあろう。
 ただ、演技が際立っていた。王妃アンナと王エンリーコの狭間で思い悩む姿は、実に美しかった。


 彼女の真の実力をはっきりと示してくれたのが、その翌年5月の同じくミュンヘンモーツァルト皇帝ティートの慈悲」セスト役だった。
 この公演は、逆に彼女の独り舞台で、他の出演者が完全に霞んでしまっていた。ティート役でフィリップ・ラングリッジなどの名歌手もいたが、その他の出演歌手も含めて、全く舞台姿が思い出せない。それくらいカサロヴァの印象が強烈だった。声に芯と張りがあり、筋が通って自信満々の歌唱。ここでも卓越した演技は絶品の一言。

 その後、彼女は来日を重ね、日本のファンにも「カサロヴァここにあり!」と名を轟かせた。日本での公演で思い出深いのはボローニャ歌劇場引っ越し公演で歌った「セヴィリアの理髪師」のロジーナですかね。共演者がF・D・フローレスだったのもすごい。


 カサロヴァさん、とっっっってもいい人です。

 上記のアンナ・ボレーナの公演から4日後、同じくミュンヘンヘラクレスザールでグルベローヴァとのデュオリサイタルを聴きました。(日本でもこのコンビでやりましたよね。)
 非常に楽しめたので、休憩中にロビーで直売していたCDを買ったところ、係の人が「CDを買った人は終演後のサイン会に参加できます。」と伝えられ、「そんじゃ」とサインをもらいに行った。グル様、カサロヴァさん、そしてピアノ伴奏のハイダー(ご存じ、当時のグル様の旦那さん)の3人が雛壇に並んでいた。

 グル様は貫禄の女王よろしく余裕でサインに応じていたが、カサロヴァさんは、なんと、一人一人に声を掛け、自分の方から手をさしのべて握手していた。偉い。
 私にも英語で「どちらから来たのですか?」「日本ですか。今日の公演は楽しみましたか?」と話しかけてくれた。うれしいですねえ。
 「Yes , very much!」と答えると、はじける笑顔で「Great!」。その笑顔が見とれるほどにめっちゃくちゃきれいだったので、私は衝動を抑えきれず、ついつい「すみません、写真一枚いいですか?」って聞いた。彼女の返事は「オフコース!」。いい人だああ。

 その写真はしっかりアルバムに貼ってあります。デジタルスキャンしてブログに載せようかと思ったが、やっぱり人の顔なので肖像権とかあるかもしれないし、やめましたが、本音としてはみんなに見せたい気分。そして自慢したい気分(笑)。結婚前の若くてきれいで笑顔がチャーミングなカサロヴァさんです。


 ところで、このサイン会、せっかく3人が雛壇に並んでいるのに、サインをもらう人達が二人に集中し、一人ヒマそうだった人(もちろん伴奏さん)がいて、同情しつつ、笑った。
 ま、ハイダーだって、リサイタルの主役がこの二人で、自分は脇役ってことくらい百も承知だろうし、気にすることは絶対にないだろうけど。

 私? ‘当然’もらいませんでしたよ!(笑)