クラシック、オペラの粋を極める!

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日本のオケの弱点

前回の東京フィル公演記事の中で、私は日本のオケの特徴について言及した。
それは、「概して優秀だが、タクトへの喰らいつき、突き抜け具合、弾け具合、化学反応の燃焼度みたいな部分がどこのオケも皆平均的に弱い」というものだ。
今回は、このことについて考えてみたい。
 
「概して優秀」というのは、本当だと思う。音色は上質で繊細だし、アンサンブルも均質。音楽に対して、演奏に対して、とにかく真摯だ。
昔は、一部のオケの公演で「おいおい、マジかよ」といった下手くそ演奏に呆れることが時々あったが、最近はほとんど見かけない。時々金管楽器がズッコケて笑かしてくれるが、管楽器ならではの難しさがあり、私は寛容だ。それに、ミスにこだわっていると、大きな音楽の流れや全体的な演奏解釈が見えなくなってくる。
 
ミスなんかどうでもよくて、「タクトへの喰らいつき、突き抜け具合、弾け具合、化学反応の燃焼度みたいな部分がどこのオケも皆平均的に弱い」というのが問題なのだ。
感覚的な言葉で言うと「グイグイ感」ってやつ。世界の一流オケにあって、日本のオケにない決定的な物と言ってもいい。
 
断っておくが、こうしたグイグイ感、平均的に弱いと言っているだけで、全く無いとは言っていない。指揮者によって大きく力強く引き出されることだって、多々ある。あくまでも概論である。
 
私なりに原因を考えると、これはやっぱり日本人の特性であり、歴史であり、文化であり、長年の教育の賜物と言わざるを得ない。
真面目で勤勉。上から指示されることには忠実。議論討論が苦手で、沈黙は金、暗黙の了解、以心伝心を是とし、直接的な言い合いや意見の対立を避ける。他人と同調することを好み、大人しくしていれば事が済み、自己主張や反論が過ぎると嫌われる。突飛なことをすれば出る杭は打たれる。
 
日本のオーケストラの弱点は、そのまんま我々日本人の弱点なのだ。
 
欧米人、特にドイツ人やイタリア人を見ていると、奴らは自己主張こそが最大の正義であり、絶対に譲れない物だと思っている節がある。それは「みんなで合わせて演奏する」オーケストラの中でも一緒だ。
 
ベルリン・フィル在籍のヴァイオリン奏者、町田琴和さんが、何かのインタビューでこんなことを言っていた。
ベルリン・フィルでは、出だしの部分で、自分が確信を持って「ここだ!」と思って音を出したのなら、例え飛び出してしまったとしてもまったく構わなくて、誰も文句は言わない。」
 
オーケストラというのはアンサンブルの集合体であるし、合奏なのだから、各自が好き勝手なことをやってはいけないし、ある程度のまとまりが必要だ。
だが、それ以前にオーケストラというのは「音楽を演奏する者の集まり」であり、音楽というのはまさに表現そのものである。「このように演奏したい」という各自の強い主張が重なり合い、それが表現となって音楽を形成する。
 
日本のオーケストラ奏者よ、いや日本人よ、もっともっと大胆になれ。目立つくらいに踊ってしまえ。恐れる必要はまったく無しだ。
 
そう言うお前はどうなんだってか?
 
そりゃまあ・・その、アレだ、和をもって尊しとなすだ(笑)。