音楽之友社発行の「音楽の友」最新3月号の特集記事が興味深く、目を引いた。
それは「世界のオーケストラ・歌劇場ベスト10、音楽祭ベスト5」というものだ。40人以上の音楽評論家、ジャーナリストの選定による。
予め断っておくと、私は以前から「自分にとって、比較し優劣を付けることは、あまり意味がないこと」と主張している。ランキングというのは優劣付けみたいなもの。そういう意味では、言っていることが矛盾しているかもしれない。
だが、あくまでも多くの専門家意見のトータル集計結果ということであれば、それは各団体の実力の程を示す一つのバロメーターではないかと思う。その観点で、以下のとおり感想を述べてみるので、お許し願いたい。
ここで注目すべきは得票点数。
大差、ベルリン・フィルの圧勝なのだ。
両オケは、これまで「実力は双璧」、「人気は二分」のはずだった。
ところが今、このバランスが崩れ、一強体制への変化の兆しが見える。
率直に言って、この結果は極めて妥当、大いに納得だ。両オケを長年に渡って聴いてきて、「実力双璧」ではなく「ベルリン・フィルの方が圧倒的に上手い」という思いに至っているからだ。
こうした結果が出たから言うわけではないが、ウィーン・フィルは、昔に比べて実力が低下してきている気がしてならない。理由は分からないが。
続く第3位と第4位の結果も面白い。
第3位バイエルン放響(294)、第4位ロイヤル・コンセルトヘボウ(255)。
これまた個人的に妥当、納得。
なので、この結果に大いに溜飲が下がる。
以下、ロンドン響、パリ管、シカゴ響、シュターツカペレ・ドレスデンと続くわけだが、ここらへんになると、もう順位はあまり意味をなさず、各個人の好みで判断すればいいだろう。私個人的にはSKDの評価がもっと高い。
ムジカエテルナが来日公演前の集計であるにも関わらず堂々第11位になったり、レ・シエクルやマーラー・チェンバー、ドイツ・カンマーが、NYフィル、ロス・フィル、Stペテルブルク・フィルよりも上になったり、という結果は、なんだかいかにも評論家が選んだっぽい胡散臭さが感じられるな。
次に、歌劇場。これも興味深い結果が出た。
特にスカラ座はねえ・・・。
私自身、この歌劇場はもはや「イタリア・オペラの殿堂」ではなく、「単なる世界的歌劇場のうちの一つ」にすぎないという現実をひしひしと感じ、嘆いていたところ。
ムーティと喧嘩して袂を分けたのが、ケチの始まり。経済状況が厳しいお国事情が拍車をかける。
ボーダーレス化の時代、イタリア人の指揮者も花形歌手も、世界のあらゆる歌劇場で活躍する場がある一方で、今のスカラ座では普通にブリテンとかもシュトラウスとかも上演するし、外国人キャストが幅を利かせ、 外国人演出家がイタリアオペラを演出する。
特色が薄れるわけだ。これじゃあ、勝てん。
栄枯盛衰、名門スカラ座よ、どこへ行く!?